雪の結晶番外編/滝沢路の日記シリーズ(その1)はじめに
江戸時代のある女性の日記を読みおえました。
昔の人の日記を見るとしみじみした気分になります。
1)顔すらわからない縁もゆかりもない人物と接することができるという不思議。
人間が「文字」を発明したからこそ、
「言葉」を介して、異なる時代に生きた人の日常生活がわかり、その心情に共感できたりする。
時空を超えて交流できることが不思議です。
2)日記を通じて、「あの時代にこういう人が生きていたんだ」と新たな出会いに感慨を感じますが、
同時に「でも亡くなってこの世にはもういないんだ」とさみしくなります。
今回、読んだ日記には孫のことが日々克明に記されていました。
ほぼ毎日、うんちが何回出た。下痢はどうの。風邪をひいてどんな対処をしたか。
よちよち歩きができるようになって、乳歯が抜けて・・・
どんないたづらをして怪我をして、誰がどんなおもちゃをくれたかなど。
でも、時は江戸時代。あたりまえですが、この小さな子ですら、もうこの世にはいないのです。無常観を感じます
3)いつの時代にも変わらない「心」を感じます。
誕生をよろこび、季節の行事を愉しみ、死を悲しむ。日々の生活を懸命に生きる姿に普遍的な「人の心」を感じます。
----------
さて、今回読んだ日記というのは滝沢路(たきざわみち)という女性の日記です。
滝沢路と聞いて、ピン!と来る方がいらしたら相当の江戸時代通。
ヒントは苗字。
答え。滝沢路は『南総里見八犬伝』の著作で有名な滝沢馬琴(曲亭馬琴)の長男宗伯の妻です。
私が路を知った発端は土井利位(どいとしつら)の雪の結晶です。
江戸時代の古河藩主、土井利位侯がどんな雪の日に結晶の観察したのか知りたいと思いました。
そこで
→同時代に同じ江戸の町で暮らした曲亭馬琴の日記を調べる
→雪の日の詳細がわかるとともに馬琴が土井利位の雪華図説を写し取っていたことを知る
→晩年、目が不自由な馬琴に替って路が著作や日記の口述筆記をおこない、馬琴没後も日記を書き続けたことを知る
→路の日記を読む
に至ったわけです。
成果
◎路も日記に天気を記していたので、嘉永~安政の雪の日を知るいい資料になりました。
☓馬琴と宗伯(路の夫)が模写した土井利位の雪華図について言及してくれていたらと思ったのですが、
それに関する記述はみつけられませんでした。
というように、雪に関する収穫は多くはありませんが、
江戸時代(嘉永~安政)のことがわかって大変興味深かったです。
当時の食生活、江戸の町の火事の記録、正月、盆、月見などの行事の祝い方、
毎日の気象、当時の病気や薬、治し方などを知りたい方におすすめします!!
とりわけ、安政の大地震の描写は克明なので、資料として価値があると思います。
そこで、雪の結晶シリーズのスピンオフとしてこの路の日記を
1)はじめに
2)文筆に導かれた人生&ただし書き&家系図
3)路も体験した安政の大地震他嘉永~安政の地震の記録
4)嘉永3年~安政5年の江戸の町の雪の記録
5)息子太郎の壮絶な闘病と死
6)手を焼いた孫倉太郎と力次郎
7)飼い猫の仁助について
8)食べ物、黒船などの時事ほか
9)路の最期
10)路の家族のその後
11)路を題材にした作品
12)「ひ」が「し」になる江戸っ子の証が
13)お墓を訪ねてみました
の13回にわたってご紹介します。
路女日記
瀧澤路女日記 上
瀧澤路女日記 下巻
雪の結晶INDEX(全般)はこちら
« ガガーリン102 山梨県立科学館(甲府)に行ってきました | トップページ | 雪の結晶番外編/滝沢路の日記シリーズ(その2)文筆に導かれた人生&ただし書き »
「 雪の結晶」カテゴリの記事
- 雪の次の日。生まれて初めて見た光景。降り注ぐ雪しぶき。(2022.01.15)
- こたべのパッケージに雪の結晶発見!(2020.01.26)
- 2020年1月18日の雪で結晶は撮れるか(2020.01.23)
- 榛原(はいばら)の御朱印帳を手に入れました。土井利位侯の雪華がいっぱい(2020.01.12)
- 雪輪はもっとも好きな雪の文様の図案のひとつ(2019.12.29)
« ガガーリン102 山梨県立科学館(甲府)に行ってきました | トップページ | 雪の結晶番外編/滝沢路の日記シリーズ(その2)文筆に導かれた人生&ただし書き »
コメント