雪の結晶番外編/滝沢路の日記シリーズ(その12)「ひ」が「し」になる江戸っ子の証が。
滝沢路の日記(その7)のあと(その8)以降を飛ばして(その12)です。
ただし書きはその2を。
江戸っ子は「ひ」が言えなくて「し」になるといいますよね。
私も知り合いの江戸っ子が朝日新聞を「あさししんぶん」と発音するのを聞いた時、感動しました。
本当に「ひ」が「し」になるんだ!と。
さて、今、江戸時代の滝沢路(たきざわ・みち)という女性の日記を読みこんでいるわけですが、
そこにも面白い記述を見つけました。
路というのは滝沢馬琴(曲亭馬琴)の息子の妻。
路は馬琴の後を継ぐように、<滝沢家の記録>である日記を書きつつけているのですが、
それをまとめた『瀧澤路女日記』の下巻に
路の娘のさちが代筆をした記載もあります。
さちが記したのは路が晩年に体調をくずした時と、路がなくなった後です。
今回、あら!と思ったのはこの娘さちの記述なんです。
さちの文章はひらがなや誤字が多いです。
路に比べて文章を書くことにまだ慣れていないんだな、
とあらためて路の文筆の力を感じるのですが、
さちの書いた文章に頻繁に登場する言葉に「しる」があるのです。
「しる時ころより伝馬町へかい物に行」「しる時過」「しる時ころ帰宅す」「しる前ふるまひ」などなど。
最初は、ん?と思いましたが、すぐに「昼(ひる)」のことだ!!と気づきました。
一か所だけ安政5年10月18日の日記に「ひる時ころより」と出てきますが、それ以外は全部「しる」です。
安政時代の江戸っ子が「ひ」が「し」になるのを目の当たりにできてとても興味深いです。
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ところで、私事ですが、私も「ひ」と「し」の混同があります。
実は7月7日を「しちがつなのか」と言えず「ひちがつなのか」。
子供の頃から「オオカミと七匹のこやぎ」は「おおかみとひちひきのこやぎ」。
でも文字で「ひち」と書くことはありません。
大人になってから、「ひち」と発音するのは間違いのようだと気づきましたが、長年の習慣は治りません。
「質屋」は「しちや」とちゃんと言えるので、物理的に「しち」が発音できないわけではないんですよね。
「し」が「ひ」になってしまうもう一つは「お布団を敷く」。
「敷(しき)布団」という単語があるわけだし、
「敷く」は「しく」だと頭でわかっていながら、「お布団をひく」と言ってしまいます。
なんで間違えちゃうんだろうと思っていたのですが、
最近になって、関西では「しち」を「ひち」と言うことを知りました
感激しました。
間違っていたわけではないんだ。私のルーツはこれだ!と。
姉に早速確かめてみると、私と一緒でした。
意識的に「しち」と言うようにしているけれど、無意識だと「ひち」になっちゃうとのこと。
母が関西出身のため、「母の影響だ、きっと」と二人で盛り上がり、母に確認すると、
「私はちゃんと教科書通りに発音しているわよ。ひちにならないわよ」と答えが返ってきました。
「でも発音してみて!」と母の「七月七日」の発音を確かめると、
「しち」ではなくてしっかり「ひち」になっていました
今月は7月なので、仕事で「7月」と発声する機会がすごく多いんですよね。
ひちは間違いではないと知ったわけですが、ひちは関西の方言という認識が広まっていませんよね。
関東で暮らしていることもあり、「ひちがつ」と、「ひ」を小さな声にして発音するようにしています。
「ひちがつ」と発音していることをなるべく気づかれないように。
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emiさん
おはようございます♪
お母様、関西の方なのですね。^^
「し」が「ひ」になるお話、存じ上げませんでした。
でも似たようなケースは、すぐ具体例を想いだせないのが残念ですが
私の住む山形でも、地方によっては、方言なのでしょうか、
あるような気がします。(ご高齢の方とか)
関西語を学ぶため、ホームステイとかあったら良いのにと
思っていた私にとっては、関西の文化も肌でご経験された
emiさんが、羨ましいです。
韓国のお友達も、日本語を学んでいても
確か語尾の「す」が「ちゅ」に発音されるように聞こえて
子どもみたいで、可愛らしいなと感じたのを覚えております。
長年の馴れは、意識しないとつい出てしまうけれど
色んな言語があった方が、その人を特定する感じも好きだし
人生も豊かで楽しいものになると思います☆
投稿: おんぽたんぽ | 2014年7月13日 (日) 07:28
おんぽたんぽさん。こんにちは。私も、「ひ」が「し」になるのは私だけかな~と思っていたので関西では、ってことを最近知ってびっくりしました。
断言はできませんが、茨城、栃木、福島の方と接した時に「え」と「い」の発音が近いと感じました。以前福島に行った時、「ミチイ」さん「カズイ」さんという名前の女性がいらいていて、なんでだろと思ったのです。その時、「ミチイ」さんは「ミチエ」さん、カズイさんは「カズエ」さんの感覚なんだ!って思ったことがあります。
その土地ならではのローカルな言葉づかいや食べ物って興味深いですよね!
投稿: emi | 2014年7月13日 (日) 14:47