加賀前田侯の氷献上他、雪で涼をとることもあった江戸時代の江戸の町の人たち
連日暑い日が続いていますね。
でも、現代の私たちは、クーラーのあるところに逃げ込めます。
冷蔵庫を開ければ冷たい飲み物が、冷凍庫を開ければ、アイスクリームや氷があってかき氷も楽しめます。
涼をとる方法がいっぱいあります。
ですが江戸時代の人たち(もちろん江戸時代以外も)は大変でしたよね。
エアコンも冷蔵庫もない。
でも江戸時代の江戸の町の人たちも夏に「氷」や「雪」で涼を取ることもあったのです。
ごく一部の人、また庶民にとってはごくまれな時に限られるかもしれませんが。
加賀の前田候は旧暦の6月1日に将軍家に氷の献上をおこなっていたようです。
このことは、
江戸の正月から12月までの歳事記を綴った『東都歳事記』斉藤月岑(げっしん)著の6月の項に書かれています。
※以下、引用部分は青文字。
ネットで閲覧/早稲田古典籍総合データベース (ttp://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/)で閲覧可能。 トップページ→東都歳事記で検索 →請求記号:ヲ06_03375のNo.3のHTML →No.14 リンク切れになるかもしれませんが直接のURLはttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/wo06/wo06_03375/wo06_03375_0003/wo06_03375_0003.html のNo.14 本で閲覧/『東都歳時記 2』斉藤月岑著 朝倉治彦校注(平凡社 東洋文庫 1971) 東都歳事記 (2) (東洋文庫 (177)) 六月の朔日(ついたち)の項にこう記されています。 氷室御祝儀(賜氷の節) 加州侯御藩邸に氷室ありて今日氷献上あり。 町屋にても、旧年寒水を以て製したる餅を食して、これに比らふ。 |
冷凍庫がない江戸時代でも、加賀からはるばる江戸へ雪を運んだり、氷室をつくって保存することが可能だったのですね。
氷献上(氷といっても雪ですが)について詳しいのは下記の2つです。
●中島満氏による「お氷さまと富士参り」 (ttp://www.manabook.jp/nhk-koorinohanasi.html) ●竹井巌氏による論文『金沢「氷室」考』 ネットで閲覧/金沢「氷室」考で検索 本で閲覧/北陸大学紀要 2010年 第34号 両資料ともとても興味深く、 この氷の献上について触れている文献を紹介されていますが、 氷献上についての文献が少ないことを語っていらっしゃいます。 |
ところで、旧暦の6月1日といえば今年2014年の暦だと6月27日にあたります。
それなのに、なぜ私が今日この記事をアップしたのか。
それは、江戸のことを書いている本をなにげなく手に取ったところ、
氷献上の様子がわかるあらたな資料をみつけたからです。
江戸時代に生まれ、歌川国芳の弟子でもあった渓石が |
さて、もう一つ、興味深い浮世絵を発見しました。
歌川国芳の「逢身八懐 湯しま暮雪」(個人蔵)です。
女性が桃がいっぱい盛った器を手にしているのですが、 その桃の上に白くうずたかく雪が積もっているのです。 背景には赤門でおなじみの前田侯の屋敷らしきものも描かれています。 女性の着物の柄は朝顔。 また手にした器の柄もブルーウイロー系の山水画で 「涼」が伝わってくる魅力的な絵です。 本で閲覧/ 『浮世絵で見る江戸の食卓』林綾野著(美術出版社 2014) 浮世絵に見る 江戸の食卓 ネットで閲覧/主なところを2つご紹介 ●長崎歴文化博物館での「歌川国芳展」のプレスリリースttp://www.nmhc.jp/pressrelease/pdf/2013/0627no17.pdf ●ARTS FIELD TOKYO(ttp://artsfield.jp/) →講師リスト→林綾野 直接のURLはttp://artsfield.jp/professor/000209.html 「逢身八懐 湯しま暮雪」は ダイナミックに盛られた雪に思わずゴクリとなる、 本当に魅力的な絵なのでぜひご覧になってみてくださいね。 |
江戸の庶民たちには簡単に雪も氷もまわらなかったのでしょう。
ですが、上記の『東都歳事記』に
「旧年寒水を以て製したる餅を食し」とあるように食で楽しむ工夫がありました。
また、日本人ならではの感覚だと思うのですが、
土井利位が『雪華図説』を天保時代に発表してからは、雪の結晶柄の浴衣も流行りました。
というわけで、
「雪」や「氷」を触れる。食べる。着る。で江戸の人たちは涼をとっていたのです。
海外で雪の結晶といえばクリスマス時期のオーナメントやセーターの柄に使うなど、「冬」に使うのが当たり前。
<涼のために雪の結晶を夏に使う>。
当時の人たちのこの発想は現代の私たちよりぶっ飛んでいますね。
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