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2014年8月30日 (土)

一番復活してほしい江戸時代の行事「二十六夜待ち」(その1)

日本で月見というと旧暦8月15日の十五夜、旧暦9月13日の十三夜の月を眺めるのが2大行事ですが、
それ以外の月齢の月を拝む「月待ち行事」がありました。

とりわけ「二十六夜待ち」は江戸時代、人気行事となっていました。

これは旧暦二十六日の細い逆三日月を拝むものです。
満月は夕方東の空から昇りますよね。月の出は毎日約50分ずつ遅れていきます。
ですので、二十六夜の月が東の空から昇ってくるのは夜更けまで待たなければなりません。
「月待ち」の名の通り、この遅い月の出を待つこと自体が当時の人たちの楽しみだったのです。

※月の出は季節によっても時間が変わります。
2014年東京の場合を挙げてみましょう。
2月25日(旧暦1月26日)の夜(厳密には日付変わって2月26日)の月の出は3:25。
8月21日(旧暦7月26日)の夜(厳密には日付変わって8月22日)の月の出が1:59。


江戸時代の浮世絵や年中行事の文献を見ていると
特に旧暦7月26日におこなわれた二十六夜待ちが盛大だったことがわかります。

二十六夜の月は昇る時に阿弥陀、観音、勢至の三尊が現れる。
その三尊を拝むとご利益があると信じられていたようです。

この三尊が現れるというのはいくつか説があります。

1)
Uの字型に昇る逆三日月型なので月の左端の角と右端の角と真ん中。
三か所から光が放射されるように見えた。

2)
地平線、水平線間際の細い月が錯覚で三体あるように見えた。

3)
照らされた部分がU字型になる月が昇る時、
最初に顔を出すのはの形ではなく、照らされていない影の面。
半月などの場合は照らされた面が明るすぎて影の面が見えないけれど、
月齢26ぐらいの月だと地球照によってその影の部分の模様がぼんやり見える。
その模様が三尊に見えた。

真偽はおいておいて、こんな説が言い伝えられていることが興味深いです。

いずれにしても、
二十六夜は、真剣にご利益を願う人もいれば、
かこつけて、夜更けまで飲んで歌え、踊れのどんちゃん騒ぎを楽しんだ人も多かったのです。
イベント好きの現代人とかわりませんね。

旧暦7月26日は現代の暦の8月下旬から9月中旬にあたります(年によって変わります)。

暑さも一段落して、夜更けは過ごしやすくなる頃。
また、夏至の頃より日の出が遅くなっていることから、
夜明けの空に残る二十六夜の月を眺めやすくなる頃。
ちょうどいいタイミングの行事だったのですね。

今年の場合ですと。
旧暦7月26日が8月21日。
国立天文台 天文情報センター 暦計算室 の東京のデータをみてみましょう。

2014年8月22日(金)
東京。
月の出 1:59 日の出 5:05
21日から日付変わって22日のこの月の出が二十六夜待ちとなります。

月の出は1:59ですが、私のところは東側がひらけていないので、この月の姿を見られたのは4時頃でした。
東南東の空にこんな形で見えました。
20140822_0420moon1
2014年8月22日4:20の月です

江戸時代の人たちも同じだったのでしょう。
東側がひらけた場所で月待ちをしていたら、深夜の間に二十六夜の月を拝めたでしょう。

でも、そうでなかったら、月がある程度の高さに昇るまで、さらに待つことに。

二十六夜待ちでハメをはずし朝帰りして長屋戻った亭主。
おかみさんに怒られて、
「俺たちが待ってた場所は東に邪魔なものがあって、
月が高く昇るのを待っていたら朝になっただけだ~」
なんて言い訳した人もいたんでしょうね。




江戸時代は品川・高輪あたりがいわゆるベイエリアで、絶好の二十六夜スポットでした。

ほかには、深川須崎、湯島天満宮境内、九段坂上、日暮里諏訪神社、芝浦、築地の海岸、目白不動尊境内なども人気だったようです。

二十六夜待ちシリーズ その1 その2 その3 その4

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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