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2014年12月26日 (金)

雪の結晶を観察した人たち(その1)ダイジェスト

カテゴリ「雪の結晶」で、土井利位についてはもう少し続ける予定ですが、
他の人がいつどんな風に観察しているのかに目を向けると、
利位の功績が俯瞰でさらに見えてきます。
そこで、雪の結晶観察の歴史を少しまとめてみます。

【雪の結晶の観察の歴史】

雪の結晶を観察してそれを記録に残すという歴史は、
肉眼で見てスケッチ→虫眼鏡などで見てスケッチ→顕微鏡で見てスケッチ→顕微鏡で写真撮影という流れ。
その観察の歴史についてわかりやすく書かれている本を挙げてみましょう。

日本では『氷と雪』加納一郎(1929)、『雪』中谷宇吉郎(1938)、『雪』田口竜雄(1940)、
『雪華図説考』小林禎作(1968)、『雪華図説新考』小林禎作(1982)、
『冬のエフェラメル』小林禎作(1983)


※『雪』(中谷宇吉郎著)の中で観察の歴史についての項は加納一郎の本がかなり参考とされています。
※海外では、なんといってもヘルマン著の『Schneekrystalle』(1893)
 上に挙げた日本の各書にもこのヘルマンの本の記述によるところも多く、図版の引用もしています。

私は、本の中で引用などがあると原典を自分で確かめたくなる性分。
いろんな資料が入手でてきました。
それは、ネットが発達し、海外の文献がオンラインでアップされたり、
図書館の検索なども容易になった現代だからこそかもしれません。

日本の各著で取り上げられている雪の結晶図は一部に過ぎず、
原典ではもっとたっくさーんの美しい結晶図がみられたとか、
各著で述べられていないことがでてきたり、
お宝ざくざく!調べ物冥利に尽きました(^o^)丿

ただ、私は雪の専門家ではありません。
まだ文献探しも進行形。検証も不十分。
加筆修正ありえますことをご了承ください。転載もご遠慮ください。

まずは、ダイジェストを。

【雪の結晶の観察者として特筆すべき人物を年代順で】
*は雪の結晶の絵、もしくはスケッチを描いている人
は顕微鏡&スケッチ派 は顕微鏡&写真撮影派
方法が未確認の人物は*の色のままです。「精密」というコメントは私の主観です。
--------------------------------------------------------------
BC140年頃  中国で韓嬰が雪が六出(6弁の花状)であることを『韓詩外伝』に記す。

1250頃     アルベルタス・マグヌス(Albertus Magnus)雪が星状であることに気づく。

1555 *   オラウス・マグヌス(Olaus Magnus) 
         『Historia de gentibus septentrionalibus』で幾つかの形の雪を描く。
         翻訳本『北方民族文化誌』

1611      ケプラー(Kepler)「Strena seu de nive sexagula」で雪が六角形であることを語る。

1637 *    デカルト(Descartes)「気象学」で結晶のスケッチを10点ほど。
          「気象学」は『方法序説』に収録

1660 *    バルトリヌス(Bartholinus)『De figura nivis』で結晶スケッチ9種。

1662     ロバート・フック(Robert Hooke)。雪の結晶14種。

1666     ロバート・フック(Robert Hooke)『Micrographia』で顕微鏡によるスケッチ掲載。
          24種ほど。翻訳本『ミクログラフィア』

1675 *    フリードリッヒ・マルテンス(Friedrich Martens)24種ほど。

1681 *(精密)ロゼッティ(Rossetti)『La figura della neve』の中で。で50種ほどか。

1733 (精密)ショイヒツァー(Scheuchzer)『PHYSICA SACRA』の中で100種。
          ただし描いたのはPintzか。

1740 (精密)ネティス(Nettis)。1755年に発表の論文で91種の雪の結晶スケッチを発表。

1778 (精密)マルチネット(Martinet)『Katechismus der Natuur』の中で。私の確認は12種。
          翻訳本『格致問答』    

1796     司馬江漢『天球全図』の中で9種。

1820 (精密)ウイリアム・スコレスビー(William Scoresby)。
          『An acount of the Arteic Regions』で96種掲載。

1832 (精密)土井利位。『雪華図説』で86種発表。
          1837年刊の鈴木牧之による『北越雪譜』に35種模写される。

1840 (精密)土井利位。『続雪華図説』で97種発表。

1855 (超精密)ジェームス・グレイシャー(James Glaisher)。
           私が確認したのは21点。芸術と呼びたいほど繊細さが美しい。

1865 *(精密) フランシス・チッカリング(Frances E. Chickering)。
           著書『Cloud Crystals; a Snow-Flake Album』の中で様々な雪の
           結晶のフォルムを切り絵にして発表。

1872 (超精密)ジョン・チンダル(John Tyndall)。『From The Forms of Water』。
           チンダルは記述のみ。グレイシャー、スコレスビーの図を転載。

1891        Umlauft「Das Luftmeer」。詳細未確認。

1893頃*    ノイハウス(Neuhauss)。ヘルマンの『Schneekrystalle』(1893)で15カットほど掲載される。

1894頃*    シグソン(sigson)。ヘルマンによって紹介される。小林禎作氏の本に掲載あり。

この頃 *        ノルデンショルト(Nordenskiold)。詳細未確認。

1901      ウイルソン・ベントレー(Wilson Bentley)。雪の結晶顕微鏡写真を気象学会誌に発表。

1903 *     アレニウス(Arrhenius)『Lehrbuch der Kosmischen Physik』で
                         雪の結晶について記述。掲載の図は誰によるものか調べ中。

1931      ベントレー&ハンフリーズ(Wilson Bentley&William Humphreys)
           『Snow Crystals』で結晶写真を2000点以上掲載と圧巻。
           ベントレーは31年以前にもいくつかの本で結晶写真を発表。

1932~     中谷宇吉郎。ベントレーの写真に触発され、研究を開始。
           雪の結晶の分類、人工雪の研究をおこなうなど、雪の研究家として世界的に有名。

1934頃*    岡順次。詳細未確認。

【雪の結晶観察の歴史でエポックメイキングな人(私の主観で)

顕微鏡+スケッチ派 
結晶の図の多さや、精密さから、スコレスビー。土井利位。グレイシャー。
ヘルマンは利位を知りえなかったのか、著書『Schneekrystalle』で触れていないのが残念。  

その著書が広く普及しておらず、
影響力は大きくはなかったのかもしれませんがロゼッティ、ショイヒツァー(の本の中の銅版画)、
ネッティのスケッチも数の多さ、精密さ、素晴らしいです。

顕微鏡+写真撮影派 なんといってもベントレーですね。
雪の研究家     
ヘルマンと中谷宇吉郎でしょうか。ヘルマンは雪の結晶観察の歴史を19世紀に
まとめた立役者。中谷宇吉郎の業績は誰もが知っているところですね。

【雪の結晶を観察した人たちシリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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