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2015年2月26日 (木)

雪の結晶を観察した人たち(その12)---チッカリング

雪の結晶を観察した人たちの歴史の中でキラッと異色の光を放っているのがチッカリング。
なぜなら女性だから。そしてペンで描くのとは違う方法で雪の結晶を形にしたから。

その雪の結晶はとても美しく、愛らしく、科学とアートの両面を感じさせる作品となっています。
今回、その画像の使用許可を
「American Antiquarian Society」
(ttp://www.americanantiquarian.org/)からいただきましたので、
貴重な画像とともにご紹介します。 
(画像の二次利用はご遠慮ください)



1864 フランシス・イヴリン・チッカリング(Frances Evline Chickering)。
著書『Cloud Crystals; a Snow-Flake Album』で観察した雪の結晶を発表。


人物/アメリカのメイン州ポートランドの牧師ジョン・ホワイト・チッカリングの妻。
生年1809-没年1885。
掲載文献/『Cloud Crystals:a Snow-Flake Album』チッカリング著

詳細/日本でこの本を所蔵している図書館をみつけられず未見なのですが、
少なくとも21種の雪の結晶の形を紹介しています。

雪の結晶を彼女はどんな風に形にしたか。それは描くのではなくて「切り絵」という方法のようです。
出版にあたっては、Richiadson氏がリトグラフにしたそうです。

American Antiquarian Societyの(ttp://www.americanantiquarian.org/adoptagiftbook1)
とポートランドに関するフェイスブック、

Portland Maine History 1786 to Presentを照らし合わせると。


観察方法→暗い色の毛皮や布に雪の結晶を置く。拡大鏡で観察。切り絵にする。
チッカリングはこの方法で200種類以上の形を観察、記録に残したそうです。

本の内容→雪の結晶の切り絵だけではなく、シェークスピア、エマーソンの詩など65篇を引用。
雪の結晶ができる気象条件など科学的な記述もあり、アート本と科学本の両面を持つ本のようです。

以下画像はすべてクリックで拡大します。© American Antiquarian Society
Chickering_3


シックな色が素敵です。
チッカリングは学者ではなくアマチュアとしての活動だったようです。
COLLECTED AND EDITED BY A LADY

と書かれていますね。

Chickering_5
中央にMrs.J.W. Chickeringとあります。
これはJ.W. Chickeringの妻、という意味です。
J.W.の上に小さくFrances E.と書かれています。

Chickering_1


こちらがチッカリングが切り絵で形作った雪の結晶です。
よく特徴をとらえていると思うと同時に、このままクリスマスカードにしたいくらいの美しさを感じます。
Chickering_4

1864年といえばまだ江戸時代、文久3年。
一女性が雪の結晶に情熱を傾けていたのですね。

Chickering_2_2


このようなページもあります。

翻訳本/なし。
転載本/『SNOWFLAKE』ケネス・リブレクト著(山と渓谷社 2006)。
p20で雪の結晶7種(上記のものとは別)を紹介しています。
解説文は
「雪の結晶の切り絵。
メイン州の牧師の妻フランシス・チッカリングは、結晶の絵を1864年
、『Cloud Crystals:a Snow-Flake Album(雲の結晶:雪の結晶アルバム』に
載せました。
チッカリングは窓辺に降る雪の結晶を良く調べ、すばやくその形を切り絵に残しました。

と書かれています。

茶色を背景にした白い雪の結晶。
シックで美しいですよね。
切り絵の繊細な針や枝一つ一つをカットしながら、チッカリングはその造形の細やかさに感嘆したんだろうな~と想像できますね。

【雪の結晶を観察した人たちシリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶INDEX(全般)はこちら

2015年2月22日 (日)

松屋銀座に架谷庸子さんの作品を拝見しにいきました

2015年2月11日のブログでご紹介した
赤絵の架谷庸子(はさたにようこ)さんの作品を拝見しに松屋銀座に行ってきました。

フェイスブックを通じてコンタクトを取らせていただき、
3月3日までの福島武山 赤絵一門展で作品を展示、今日いらっしゃる
とうかがっていたのです。

お会いした架谷さんははんなりした雰囲気と凛とした雰囲気を併せ持つとても素敵な方でした。
モチーフの愛らしさとデザインのシンプルモダンさ。
細やかな模様を緻密に描く職人性&モチーフ選びや色合いを決める独創性。
この相反するような二つの要素から生まれる素敵な作品のイメージ通りの作家さんでした。

従来の赤絵が<筆を走らせる。ぺったりと塗る>なら、
架谷さんの作品は<エッチング&水彩>と感じたのは、
赤絵細描(さいびょう)というジャンルだったからなのですね。

赤絵細描を復活させたのが福島武山氏。そしてそのお弟子さんの一人が架谷さん。
今回は福島氏の作品と一門の作家さんの何人かの作品が並べられていました。

私がびっくりしたのは、
作品の濃い赤、レンガ色、朱赤、オレンジ色、ピンクがかった色に見えるところのすべてが同じ「赤」の顔料だということ。
水で薄める濃度で色が違ってみえるというのが驚きでした!!

実演もしてくださいました。
架谷さんと松屋銀座さんのご了承を得て、写真とともにご紹介します。

こちらが赤絵の顔料。ベンガラというものが使われています。
20150222hasataniyokosan01_2
ベンガラは弁柄と書くから日本語のようですが、
実はインドの言葉なんですよね。
もとは「ベンガル」。
江戸時代に天竺(ベンガル)からきたからベンガラと呼ばれた、
と以前、日本の伝統色辞典で見ました。

使用される筆です。(いつも使われているものの一部)
上から4番目は金を塗る時の筆とのこと。
20150222hasataniyokosan02_2

リズミカルに走る筆。白い小皿に花が咲きました。
20150222hasataniyokosan03_2
中央の花芯が赤。まわりの花びらがピンクがかってみえますが、
同じ赤絵の具からうまれています。

ルーペなどは使わず肉眼でおこなうそうです。
20150222hasataniyokosan04


2つめの花です。
まず*を書いて、中心に●を置いて、
20150222hasataniyokosan05

周囲に6つの●を加えていかれました。
20150222hasataniyokosan06

3つの花が咲きました。

20150222hasataniyokosan08
同じ赤絵の具なのに、水で薄める具合だけで
こんなに色合いが違っているのがびっくりですね。

右側の箱におさめられたのは「型」です。
黒い○は架谷さんご自身が桐墨で描いたもの。
20150222hasataniyokosan09
この型を押し当てるとそこに黒い○が転写され、
下書きの線となるわけです。
その上を赤絵の具をつけた筆でなぞるわけですね。
焼くとこの下書きの線は消えてしまうそうです。

フリーハンドで描かれたり、作品によってはこのような型を用いられるそうです。
雪華柄も型を使って描かれたのだとか。

左側の袋に入ったはちみつ色のビーズに見えるものがアキフ。
ゼラチンのようなもので、赤絵の具を溶く時にこちらを混ぜるそうです。

描いて、焼いて、その上に色を重ねてと何回も工程を経て仕上げられます。
こちらは一度焼いた後に淡く色を重ねていらっしゃるところ。
20150222hasataniyokosan13

展示されていたこちらの作品も同じ工程でできているのですね。
花の上にほわっと色が重なっている様子がわかります。
20150222hasataniyokosan14

水色の絵の具はガラス質のものが入っていて、少し浮き上がっています。
赤絵の部分は手で触れてもデコボコを感じませんが、
水色の部分はあきらかに立体感がありました。
20150222hasataniyokosan15

雪華紋の平盃にも再会。
同じ赤絵の具でこんなに色のグラデーションが生まれるなんて本当に不思議。
20150222hasataniyokosan10

20150222hasataniyokosan11
金をはさんで上の赤と下のサーモンピンクも同じ赤絵の具。

やっぱり不思議~。

赤絵細描の作品が手がかかることがとてもよくわかりました。
以前、古典文様の本で江戸時代からの雪華柄として紹介されていたのをご覧になったのが、雪華柄を描かれたきっかけだとか。

雪華柄は少しずつアイテムが増えるかもということでしたので、
いつかお皿を手に入れられたらいいな~と思います。

こちらは書道で墨を薄める時に使う「水滴」。
20150222hasataniyokosan17
お花のような丸のほかに四角や三角が並んでいて、
ラブリー&スタイリッシュ。

差し色の水色も効いてとても素敵でした。

プロフィールも撮らせていただきました。
20150222hasataniyokosan16


場所は松屋銀座7階。三越寄りの一角です。

3月3日までとのことですが、
デパート内の展示会の最終日は作品の搬出などで、クローズ時間が早まることが多いですよね。
お時間などご確認ください。

このブログ内で架谷庸子さんの作品に関する記事は

架谷庸子 site:http://hoshi-biyori.cocolog-nifty.com/star/

で検索くださいませ。

念願の雪華紋のお皿も後日手にいれました~。

【雪の結晶とアート】INDEXはこちら
雪の結晶INDEX(全般)はこちら

2015年2月19日 (木)

今日は旧暦の1月1日

春節の休暇で中国から多くの観光客が日本にやってきているというニュースがにぎわっています。

春節とは旧暦のお正月。
今日2月19日が旧暦の1月1日となるのです。

旧暦では新月の日が1日と決まっています。
1月31日が新月の年もあれば2月10日が新月の年もあります。

ですので旧暦1月1日がいつになるのか。幅があります。

1996年~2050年の旧暦1月1日を調べてみました。

(見方:1月22日が旧暦1月1日になるのは 2004年、2023年、2042年となります)

1月


22日 2004 2023 2042

23日 2012 2031 2050

24日 2039

25日 2020

26日 2009 2047

27日 2028

28日 1998 2017 2036

29日 2006 2025

30日 2044

31日 2014 2033


2月

1日 2003 2022 2041

2日 2049

3日 2011 2030

4日 2038

5日 2019

6日 2046

7日 2008 2027

8日 1997 2016 2035

9日 2005

10日 2013 2024 2043

11日 2032

12日 2002 2021 2040

13日 2029

14日 2010 2048

15日 2037

16日 1999 2018

17日 2026 2045

18日 2007

19日 1996 2015 2034


もっとも早い時で1月22日。
遅い時で2月19日になっていることがわかります。

2月19日が旧暦1月1日になるのは1996年以来19年ぶり。
そして次に2月19日が旧暦1月1日になるのも19年後の2034年なのですね。

2015年2月17日 (火)

雪の日に手に取りたい酒井駒子さんの「ゆきがやんだら」

明日は雪になりそうです。

雪の結晶が出てくるわけではないのですが、
雪の日のグレイッシュな空気感と白い玉がたくさん降ってくるおごそかさ、
静けさがどのページからも伝わってくるので買ってしまった、my雪の絵本コレクションの1冊。

それが酒井駒子さんの『雪がやんだら』。
多くのファンを持つ作家さんですよね。


ゆきがやんだら (学研おはなし絵本)

うさぎちゃんとママの雪が降った1日をつづった絵本です。

「ぼくとママしかいないみたい、せかいで。」

この言葉の感覚ってあるある!って思う人はぜひ読んでみてください。
雪って音を吸い取ってしまうのか、し~~~んとして、
世界に自分(たち)だけしかいないって思わせる不思議な魔法がありますよね。

雪でつくる雪だるまのようなものもでてくるのですが、きちんとアップでその絵を紹介していなかったり、
絵本なのですが、想像の余白がいっぱいあって、そこを思いめぐらせる楽しみがある作品です。

色調は
■■■■■■■■■■■■■■■■

こんな感じでしょうか。

翻訳され、海外でも出版され、高い評価を受けているようです。
英語版は『The Snow Day』。
ゆきがやんだら、ではなくて、雪の日。というタイトルですね。

ゆきがやんだら、にはうさぎちゃんが「雪がやんだらなにしようかなと考えている楽しみや、
それを待ちながら雪を眺めている様子が伝わってきます。

ゆきのひ には ゆきがふっているさまそのものが大切なできごと、
というニュアンスが強く感じられます。


The Snow Day


英語版はうさぎちゃんの向きが逆です。
そしてタイトルが白。
私は英語版は未見ですが、タイトルが白の方が、雪の風景に溶け込んでいていいな~と思います。


Es schneit!

ドイツ語版。




Cuando deje de nevar/ When It Stops Snowing

スペイン語版。


椅子の上に座って、そしてちょっと腰を浮かし雪を降るのを眺めている。
それだけで、興味津々なうさぎちゃんの気持ちが伝わってくるようです。

少ない言葉で雪の一日を描いているので、海外の人にもダイレクトに伝わるでしょうね!

雪の絵本INDEXはこちら
雪の結晶INDEX(全般)はこちら

 

2015年2月15日 (日)

雪の結晶シリーズ番外編 国立科学博物館で「国産顕微鏡100年展」が開催されます。

東京上野の国立科学博物館で2015年3月3日から4月19日まで「国産顕微鏡100年展」が開催されます。

すごく楽しみです!!

というのも、土井利位(どいとしつら)は江戸時代にどんな顕微鏡で雪の結晶を観察したんだろうと調べているうちに、
当時の顕微鏡の工芸品かと目を見張るような美しいフォルムや、
当時の人が顕微鏡で覗いた虫のスケッチや、
その向学心探究心に魅了されてしまったからです。

科博さんでのこの展覧会のインフォメーションは
http://www.kahaku.go.jp/event/2015/02microscope/になります。

まあ!と思ったのは「100年展」のロゴのゼロ2つのところに雪の結晶のようなものが描かれていること。
Kahaku_microscopes


これは土井利位の雪華なんですよ~。
古河歴史博物館の図録「雪の華」には土井利位の描いた雪華の分類表が掲載されているのですが、
あてはめると

A6とA4ですね~。
Sdoi_a6n
Sdoi_a4n


この顕微鏡展にかかわっていらっしゃる島津理化さんのHPでは、顕微鏡展のチラシもアップされていました。
http://www.shimadzu-rika.co.jp/pdf/a_century_of_japanese_microscopes.pdf


チラシの背景にはA5や昔の人が顕微鏡で覗いて描いた虫のスケッチ、植物の細部などがあります。
Sdoi_a5n


楽しみな企画展です。

科博さんの日本館での顕微鏡常設展に行った時のブログはこちら

【江戸時代の顕微鏡シリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶INDEX(全般)はこちら

2015年2月14日 (土)

雪の結晶を観察した人たち(その7)ロゼッティ・・・ の追加です。圧巻の雪の結晶スケッチ

ブログ「今日も星日和」は2006年2月22日に始めました。
ですのでもうすぐ丸9年になります。

この9年の間に2つの変化を感じています。

その一つは、リンクを張っていたところがリンク切れになってしまったところがあるということ。
もう一つは、ワールドワイドで古い資料のデジタル化が進み、
以前はネットで閲覧できなかったのに今は見られる資料が増えたこと。

ですので、今、少しずつ過去に書いたものを見直し、リンク切れを削除や再リンクなど修正をしている最中です。

さて、以前は見られなかった資料が見られる。
これは本当にありがたいことです。
海外の大きな図書館の貴重書室に大切に保管されているだろうお宝を、
渡航して、慣れない言語を使って図書館の入館や申請や許可を取ったりすることなく、
この日本で仕事から家に帰って、
部屋着に着替えてパソコンの前でくつろいだ姿で貴重資料を読むことができるのですから。
デジタル化万歳!です。

さて、先日、感動した一つが
イタリアのロゼッティの著書『La figura della neve』(1681年)。
(発音がロセッティかわからないのですが、小林禎作氏にならってロゼッティとします)

2008年に「雪の結晶を観察した人たち(その7)」でご紹介した人物です。
この時は彼の著書ネットで閲覧できるところがなく、国内でも資料を所蔵しているところをみつけられませんでした。

ロゼッティの描いた結晶図は転載した文献『scheekrystalle』(ヘルマン)、『氷と雪』(加納一郎)、
『雪』田口竜雄、『雪華図説考』(小林禎作)などで見ることができました。
それらの文献には10種類の結晶が描かれていました。

ですので、彼は10種だけを描いたと思っていたのですが、
先日、この本の全文を閲覧できるサイトを発見。
Museo Galileo Digital Library (ガリレオミュージアムデジタルライブラリー)

そして、ロゼッティのこの著書にはもっと多くの結晶が描かれていることがわかりました。
感動です。圧巻です。かなり精緻です!! 1600年代なのに!!!

ガリレオミュージアムデジタルライブラリーさんにコンタクトを取り、
このブログでの画像公開の許可を得ましたので、7点ご紹介します。
(画像はクリックで拡大します) (二次使用はご遠慮ください)

Rossetti1


Rossetti2_2
ヘルマンが自身の著書『scheekrystalle』で転載したのは↑の1から10番までの結晶です。


Rossetti3
1600年代の顕微鏡でここまで模様が見えたのですね。

Rossetti4

SやTは六方向に伸びる形が西洋の建築にあるリリーフみたい。
人は形を瞬時に捉えようとする時、身の回りの似ているものに投影して
記憶しようとするのかもしれませんね。
Rossetti5

かなり細かく柄を観察できていることがわかります。
素晴らしい顕微鏡ですね。
Rossetti6


Rossetti7

現代の雪の結晶写真集に照らし合わせても、特徴をつかんだ優れたスケッチであることがわかります。
画像:source:Museo Galileo Digital Library (ttp://www.museogalileo.it/)

圧巻の7画像をご紹介しました。
ただ、文献はイタリア語。私はちゃんと解読できていません。
ロゼッティが他者の描いたものを転載しているという可能性もあるわけです。

ですので、現段階では、上記の結晶は、
ロゼッティが『La figura della neve』の中で描いた
のではなく、あくまでで、ロゼッティの著書『La figura della neve』に出てくる雪の結晶
という言い方にさせていただきます。

【雪の結晶を観察した人たちシリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶INDEX(全般)はこちら

2015年2月11日 (水)

架谷庸子さんの赤絵の雪華紋、タイムスリップして土井利位侯、鷹見泉石に見せてあげたいです

過去にタイプスリップできたら誰に会いたいと思いますか?
織田信長?坂本竜馬?
私は天保時代にタイプスリップして
土井利位(どいとしつら/古河藩の殿様)と鷹見泉石(たかみせんせき/古河藩家老)に会いたいです。
そして架谷庸子(はさたにようこ)さんの雪華紋の器をお見せしたいです。

2014年4月24日のブログでご紹介した赤絵の若手作家、架谷庸子さん。
土井利位が描いた雪の結晶をモチーフにした雪華紋の美しさに一目ぼれして、ネットで他の作品も拝見。

雪華紋をはじめとする作品をご紹介できたらいいな~と思っていました。
先日、コンタクトを取らせていただいて、有り難くOKを頂戴いたしましたので、
お借りした素敵な作品の写真とともにこのブログでご紹介します。

さて、今から180年ほど前に蘭鏡(顕微鏡)で雪の結晶を観察して、
『雪華図説』『続雪華図説』を著した土井利位。その雪華は当時ブームとなり、浴衣の柄にもなりました。
また、土井利位は蒔絵師、原更山(はらさらやま)、
別名原羊遊斎(はらさいゆうさい)に雪華模様をモチーフにした工芸品を作らせ、
それを将軍家や大名に献上&贈答したことも。
(代表的なものが古河歴史博物館や静嘉堂文庫に所蔵されている雪華蒔絵印籠です)

ですので、土井利位も自分の描いた雪華がモチーフとなった工芸品というのは生きている間に目にしているわけです。
でも雪華の良さをうまく引き立てている作品として、
架谷庸子さんの赤絵の雪華紋は、当時の名高い原羊遊斎の作品と並ぶ素晴らしさだと思います。

当時の将軍や大名が享受できるのと同じ満足感を現代人の庶民が味わえるって素晴らしいことだな~と思います。

と、前置きして。では、いよいよ、ご紹介しましょう。
(以下の画像はクリックで拡大します)

こちらが、架谷庸子さんの平盃雪華紋です。
Hasatani_yokosan_sekkamon1_3

美しいです~。細い線と、赤のやわらかなグラデーション。
ぺったりと塗り込むのではない、ほわっとした色合い。
華やかさを添える金の輝き。

土井利位の雪華の可憐さ、繊細なタッチがとても活きています。

盃の外側は。
Hasatani_yokosan_sekkamon2_2

ボーダーと高台のところに並ぶ菱形模様がモダン。

去年、高島屋で架谷さんをはじめとする若手赤絵作家さんの作品を拝見するまで、
「赤絵」って「和」が強いものって思っていました。
習字の朱墨のような「赤」で鳳凰のようなものが描かれていて、
コントラストの効いた緑色が使われていて・・・。と。

筆のタッチではない、リトグラフのような線。
赤と緑の力強さ、ではない赤系グラデーションのやわらかい色調。
筆でぺったり、ではなく水彩でぼかしたような色付け。
小紋のような北欧デザインのようなスタイリッシュなデザイン。

どれもが目からうろこでした。

雪華紋の作品をもう一つご紹介しましょう。
2015年3月14日に開通する北陸新幹線の金沢駅の待合室やホーム。
壁に丸窓がいくつもしつらえてあり、石川県のさまざまな伝統工芸品が飾られているそうです。
(2015.3.27追記
石川県のHP内「金沢駅/伝統的工芸品探訪」でこの作品の設置場所が案内されています。
直接のURLはttp://www.pref.ishikawa.jp/shink/kanazawaeki/detail/227.htmlです)


その一つに架谷さんの赤絵雪華紋もあると知り、そのお写真もお借りしました。
こちらです。
Hasatani_yokosan_hokurikushinkans_2

はめこむ前の作品は。
Hasatani_yokosan_hokurikushinkans_3

うっとり。
私恒例の土井利位雪華との対応をしてみましょう。
左上からG1、K3、A6、R8、R3、L2、N9ですね。
Sdoi_g1n

Sdoi_k3n

Sdoi_a6n

Sdoi_r8n

Sdoi_r3n

Sdoi_l2n

Sdoi_n9n

(通し番号は古河歴博物館発行の図録「雪の華」の雪華一覧表にならっています)
モノクロの線画が美しく色づけされたことで、
花のように見えたり、実のように見えたり、
雪華のフォルムのバリエーションがより印象強くなっていることがおわかりいただけると思います。

素材が木や布ではなくて、硬質の陶器というのもいいんでしょうね。
暖色系でラブリーながらもクールでスタイリッシュという絶妙のバランス。

Hasatani_yokosan_hokurikushinkans_4
金が浮かび上がってみえて華やかですね。

土井利位だからというわけではなく、日本の「雪華紋」としてモチーフに使われたそうです。
それだけ、土井利位個人のものではなく、
180年以上、この国で伝統的な柄として土井雪華が広まり生き続けているということですよね。

架谷さんの雪華紋以外の作品も素敵です。
Hasatani_yokosan_wanzara_akae_saras
椀皿 赤絵更紗紋。

水色、若草色、黄色が使わていますが
やはり従来の赤絵とは違う爽やかな色合い。
お皿に並ぶ半円がとてもリズミカル。


Hasatani_yokosan_sobacyoko_mamehana
そばちょこ マメハナ。

小紋のようにならぶ小さな六花と四角。
スイスや東欧の赤い刺繍ブラウスのよう。縁取りもレースのようでキュートです。

そして。こちらの作品にもしびれました。
九谷焼作家が絵付けしたウルトラマンアートシリーズ。

架谷さんもエレキングとバルタン星人を手がけたそうです。
Hasatani_yokosan_eleking2
く~。エレキング、ラブリーすぎます。しびれます。

バルタン星人。りりしいです。
Hasatani_yokosan_baltan_seijin1_2

底にはシリアルナンバーが入っていますね。
Hasatani_yokosan_baltan_seijin2

架谷さんの作品から赤絵と土井雪華の新たな魅力を感じさせていただきました。

(2015.2.22追記)松屋銀座に作品を拝見しに行ってきました。こちらに。

このブログ内で架谷庸子さんの作品に関する記事は
架谷庸子 site:http://hoshi-biyori.cocolog-nifty.com/star/
で検索くださいませ。

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2015年2月 5日 (木)

2015年1月31日の月は冬のダイヤモンドと「かごめかごめ」

今日は雪の予報でしたが、積もるほど降らず、
水気の多い雪~みぞれだったため、雪の結晶は撮影できませんでした。

昨日の夜は、雲の多い空ながら満月が時々見えました。
そして今もすでに空は雲が切れていて、満月から1日分欠けている月が見えています。
空の高いところに今輝いていますが少し黄色味が強いです。

昨日は満月のすぐ上に木星が輝いていましたが、今日は少し離れてしまいました。
最近の月空で特に印象に残ったのが1月31日です。

月がちょうど冬のダイヤモンドの真ん中にいたのです。
明るい星の多い冬のダイヤモンド、接近している木星。
そこに月が加わって、豪華絢爛な星空となっていました。

6つの明るい星(やまわりの星)に囲まれて、まるで月と星が「かごめかごめ」をしているようでした。

こちらが2015年1月31日20時30分頃の月。
南南東の空に輝いていました。
この時刻での月齢はおよそ11。
輝面率は89%。
半月の4日後の月です。
150131_2029ses_109th_89_5854_70a

私のカメラではまわりの星が写らないのでステラナビゲータ10でこの時間帯の星空を再現してみました。
20150131_2039fuyunodiamond2
ちょうど真ん中に月がいて、まわりの星たちと遊んでいるように見えます。

31日の前後の日、1月20日、2月1日も月は冬のダイヤモンドの中にいましたが、少し端に寄っていました。

31日のベストポジションが見られてうれしいです。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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