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2015年6月17日 (水)

田毎の月(たごとのつき)シリーズ(その3)俳句

シリーズその3では、江戸~明治の俳人の作品から、「田毎の月」が詠われた句をご紹介します。
「後の月」ほどポピュラーな題材ではないようで、みつけられたのは芭蕉、蕪村、子規ほかの十句ほど。

ただ、謎なのは秋の季語として使われていること。
田んぼに水が張らないと月は映らないわけで、5~6月の田植えの時期のはずなのに。
もともと、田んぼごとに月が映ることはないのですから、
「田毎の月」は現実ではない「心象風景」として、俳人たちは想像を湧かして
句を作ったのかしらと思います。となると季節も「いつでもあり」なのですね。
それでも芭蕉ほか、きちんと「田毎の月」の有名な場所、信州の姥捨を訪ねているようです。
(2016.6.4追記。
秋の田んぼに月が映る状況を2つ考えてみました。
その1・・・刈り入れの終わった田んぼに台風などの大雨が溜まった。
その2・・・刈り入れ前の稲穂がすべて台風でなぎ倒され、そこに大雨が溜まった。
となれば、秋なのに、田んぼは田植え前のような景色になり、水面に月が映ることもありえますね)


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【松尾芭蕉】寛永21年(1644)~元禄7年(1694)

此(この)ほたる田ごとの月にくらべみん 
(元禄元年/1688)
大津に滞在中、瀬田の蛍見に出て、更科の田ごとの月を連想した。
この秋訪れる予定の田ごとの月とその時は比べてみようと思ってのである。

(引用『芭蕉全発句』山本健吉 講談社文庫 2012 p326 より)

元日は田ごとの日こそ恋しけれ (元禄2年/1689)
意味
更科の秋はあの田毎の月を見たが、元日の今は田毎の初日が見たい
(引用『芭蕉全発句』山本健吉 講談社文庫2012  p369 より)

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【与謝蕪村】享保元年(1716)~天明3年(1784)

さみだれや田ごとの闇と成にけり 
(安永5年)『新花摘』より
※下記の蕪村集によると安永4年の夏に詠んだものか。

帰る雁  田毎の月の くもる夜に 
(年代不詳) 『句集』より 春に分類

~~おまけ 田毎の月を連想させる句~~
月に聞て 蛙(かわず)ながむる 田面哉 
(年代不詳)『句稿屏風』より 春に分類

参考『蕪村集 全 古典俳文学大系12』(集英社 1972年)

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【永宮寺松堂】明和9年(1772年)没

空に一つあまりて月の田毎かな (年代不詳) 

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【正岡子規】慶應3年(1867)~明治35年(1902)

名月や田毎に月の五六十 
(明治25年/1892)『寒山落木巻一』秋 天文地理より

おもしろや 田毎の月の落とし水 
(明治28年/1896)『寒山落木巻四』秋より

参考『子規句集』高浜虚子選(岩波文庫 1993)

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【荻原井泉水(おぎわらせいせんすい)】 
(明治17年/1884)~昭和51年(1976)

月は一つ 田毎の月の空にあり 出典未確認
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◆番外編◆

【加舎白雄(かやしらお)】
元文3年(1738)~寛政3年(1791)

「田毎の月」という言葉は確認したかぎりではでてこないのですが、
『田ごとの春』という本を出したり、田毎という言葉を何回も使っています。
そのいくつかをご紹介。

田毎のはつ日にたよりあり

沓ふみしめて山にのぼる田毎の日こそ恋しけれ 
『白雄句集 上 巻之一』春の部
国立国会図書館デジタルコレクションでの直接のURLは
ttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1194197/154
※こちらは俳句ではなく文章の一部

春いまだ 田毎の雲間雲間かな 
『白雄句集 上 巻之一』春の部
国立国会図書館デジタルコレクションでの直接のURLは
ttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1194197/155

田毎のはつ日にたよりあり
早稲田大学古典籍総合データベースでのURLは
ttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko18/bunko18_00475/bunko18_00475_p0004.jpg
※こちらは俳句ではなく文章の一部

田に水の入と啼出す蛙かな
早稲田大学古典籍総合データベースでの直接のURLはttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko18/bunko18_00475/bunko18_00475_p0009.jpg
※田毎という言葉は入っていませんが、田んぼに水が張られ、田植えの季節に啼きだす蛙の様子がほほえましいです。
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田ごとの月シリーズ
1 浮世絵(広重)
2 my写真。田んぼに映る月(6月。田植え前)
3 俳句(芭蕉、蕪村、正岡子規ほか)
4 童話(後藤楢根)、絵本(野田知佑 文・藤岡牧夫 絵)
5 my写真。田んぼに映る月(8月~9月)
6 my写真。。秋の田んぼに月は映るか。10~11月の田んぼの様子。
7 広辞苑では
8 田ごとの月ならぬ、田ごとの太陽

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月見るシアワセ」カテゴリの記事

コメント

代田風田毎の月を撮る人に

曽布川石木さま。はじめまして。
コメントありがとうございます。

代田風田毎の月を撮る人に  で検索しましたら、岐阜恵那の棚田がヒットしました。
美しい画像も見ることができました。

ありがとうございます。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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