田毎の月(たごとのつき)シリーズ(その4)童話
その4では昔の童話と最近の絵本、2つをご紹介します。
「田ごとの月」後藤楢根(ごとうならね)
田毎の月についてはフェイスブックにもアップしているのですが、
先日、素敵なアクセサリーを作っていただいた杉谷さん(2015.6.18 )から
とても興味深いことを教えていただきました。
子供の頃に「田毎の月」についてのお話を読んだことがある、と。
「田毎の月」は私は大人になってから知った単語です。
風流ですが、かなりマイナーな言葉。
知らずに一生を終える方々も多いでしょう。
それなのに、子供時代に「田毎の月」に出会われたなんて!
そのお話がなんだったのか突き止めたい!! 私も読みたい。
調べ物大好き魂の血が騒ぎます。
これかなと思う本が都立多摩図書館にありました。
複写して杉谷さんにお見せすると、おそらくこの本だったと思う!とのこと。
それは後藤楢根(ごとうならね)さんが書いた童話「田ごとの月」です。
『日本幼年童話全集 6(童話篇6)』河出書房(1955)。
こちらが表紙。レトロな絵がたまりません。
『田ごとの月』のお話を私が要約しますと。
舞台は山にかこまれたちいさな村。いくつもの田んぼが並ぶ場所です。
月の綺麗な晩に、カエルは明るい月が降りてくる自分の田んぼが一番いい田んぼと歌います。
すると隣の田んぼのカエルも同じような歌を歌うのです。
驚いたカエルがあぜにあがって隣の田んぼを覗くと。
隣の田んぼにも自分の田んぼと同じように、綺麗なお月様が映っています。
お月様は空にたった一つなのに、隣のカエルの田んぼにも他のカエルの田んぼにも
美しい月が映っているのです。
みんなの田んぼにそれぞれ美しい月があることに気づいたカエルたちは
お月様はみんなもの。どの田んぼもいい田んぼと
大合唱しました。
というお話です。
自分の田んぼが一番と思っていたカエルたちなのに、張り合うわけではなく、
全員の田んぼが一番と認め合うのがいいですね!
杉谷さんとこの童話のおかげで、田毎の月にカエルは欠かせないことがわかりました。
(事実、田毎の月を撮りに訪ねた時、カエルの大合唱に迎えられました)。
~~~この童話を読みたくなった方に~~~
都内ですと都立多摩図書館(立川)に所蔵があります。
また『きょうのおはなしなあに 夏』ひかりのくに(1997)にも収録されています。
『きょうのおはなしなあに 夏』の方が所蔵されている図書館が多いです。
「満月」~ささ舟カヌー 千曲川スケッチより~(野田知佑 文・藤岡牧夫 絵)
童話ではないけれどもう一つご紹介します。
カヌーイストの野田知佑さんが文、「田毎の月」の聖地の名所、姥捨に在住の藤岡牧夫さんが絵を手がけた本です。
ささ舟カヌー 千曲川スケッチ
<満月>のくだりに田毎の月がでてきます。
稲刈りが始まった秋の満月の夜の描写が描かれています。
満月の夜に、ある一つの田んぼのカエルが自慢した。
すると隣の田のカエルも、
「いやいや、おらっちのお月さんの方がもっときれいだ」
と負けじといった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さて、の童話は杉谷さんに教えていただいたわけですが、
「すごいシンクロ!」と私まで鳥肌が立つお話をうかがわせていただきました。
といいますのは。
杉谷さんと、田毎の月についてメールでやりとりをさせていただいた時のことです。
お嬢さまが開催中のマグリット展に行ってお土産にポストカードを買ってきてくださったそうです。
その絵というのが山高帽をかぶった3人の男性のそれぞれの頭の上に細い月が出ている
「傑作あるいは地平線の神秘」という絵だったのです。
この絵のキャプションは
一人の男が月について考えるとき、
彼はそれについての彼自身の考えを持ちます。
それは、彼の月になります。
だから私は、3人の男の頭の上にそれぞれの月がかかっているところを
描いた絵を描きました。
しかし、私たちは本当は月は一つしかないことを知っています。
これは哲学的問題です。ーどうやって単一性を分割するか。
世界は単一性でありながら、この単一性は分割できるのです。 (抜粋)
お嬢さまはお母様が田毎の月の話題をされているなんてまったくご存知ないのに。
一人一人の頭の上に月があるという、田毎の月にちなんだかのような絵をお母様にプレゼントされる。
そのシンクロぶりにとても驚きました!
そして、好きな作品をお母様と分かち合いたいというのも素敵ですね。
田ごとの月シリーズ
1 浮世絵(広重)
2 my写真。田んぼに映る月(6月。田植え前)
3 俳句(芭蕉、蕪村、正岡子規ほか)
4 童話(後藤楢根)、絵本(野田知佑 文・藤岡牧夫 絵)
5 my写真。田んぼに映る月(8月~9月)
6 my写真。。秋の田んぼに月は映るか。10~11月の田んぼの様子。
7 広辞苑では
8 田ごとの月ならぬ、田ごとの太陽
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田毎の月シリーズ完走お疲れ様&おめでとうです。
表紙の絵すごく雰囲気あっていいですよね
自分も「どの田んぼもいい田んぼ」のところ好きです。
この世界もみんなが認め合えるとよいのですが…
投稿: はるはる | 2015年6月29日 (月) 16:29
はるはるさん。ありがとうございます。完走しました~。
幼年童話の表紙絵、レトロでいいですよね。
そしておっしゃる通りだと思います。
田ごとの月の童話がすごくほのぼの感じられるのは、「どの田んぼもいい田んぼ」と認め合うところだと思います。
今ではごく一部の図書館でしか読むことができないこの童話。ぜひ誰もが手に入る形であらたに出版されないかしら~と思います。
投稿: emi | 2015年6月29日 (月) 23:00