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2015年8月27日 (木)

馬琴と画眉鳥シリーズ(その2)馬琴の『禽鏡』に感動!

画眉鳥について調べていて一番感動したことが、江戸時代にすでに日本に輸入されていたこと、そして、曲亭馬琴(滝沢馬琴)も知っていて、自ら作った鳥図鑑『禽鏡』にも取り上げていることです。

今回は『禽鏡』について詳しくご紹介します。

『禽鏡』
6巻からなる鳥図鑑。255種類306図の鳥の絵を渥美赫州(娘婿の渥美覚重のこと)に描かせ、馬琴が「瀧澤解」の名で解説を加えています。赫州はいろんな書物から鳥の絵を模写しています。
『鳥名由来辞典』の「図譜に描かれた鳥の種名の同定」によると、馬琴による解説は佐藤成裕の『飼籠鳥』から多く引用されているようです。
天保5年(1834年)に完成。
私が調べた範囲では『禽鏡』は出版されているものはなく、東洋文庫さんに現物があるのみ。
(国立国会図書館にも第一巻、第六巻があります)

さてこの『禽鏡』ですが、東洋文庫さんで拝見させていただきました。
感動です~。
巻物を自分で開いてみるなんて初めて!
複製ではありません。馬琴が書いた文字がそのまま読めるのです。渥美赫州による鳥の模写もいわば原画をみることになるので、筆のタッチがリアルです。馬琴が見たのと同じものを180年後に見られる。
『禽鏡』の絵の素晴らしさ&馬琴の追体験ができることに感動しました。

いくつかの絵をご紹介します。いずれも東洋文庫所蔵。二次利用はご遠慮ください
画像はクリックで拡大します。
画眉鳥は三巻に登場します。

こちらは三巻の巻頭。
Gabicho_32kinkyo3kan_32kinkyo

著作堂主人纂輯(さんしゅう・・・編纂の意味)と書かれていますが、
著作堂主人というのは馬琴の号です。

こちらが画眉鳥↓
Gabicho_32kinkyoshort

目元の白いアイラインの特徴がしっかり描かれていますね。
この絵は『不忍禽譜』内の画眉鳥とそっくり。
Gabicho_31shinobazukinpu
↑『不忍禽譜』より。国立国会図書館デジタルコレクションより。こちらはクリックで拡大しません。

『不忍禽譜』を模写したものか、もしくは同じ鳥の絵を『禽鏡』、『不忍禽譜』がともに模写したのかはわかりません。

さて、『禽鏡』の画眉鳥の脇にある解説文を見てみましょう。

画眉鳥 グワビチヨウ
画眉鳥潜確類書云似鸎而小黄黒色
其眉如画巧於作声如百舌
觧云先輩画眉鳥ヲ頬白ナリト云モノアリ非也


ここで「潜確類書」と出てくるのはこちらで紹介した「潜確居類書」のことだと思います。
鸎という文字は文字化けしてしまうかもしれませんが、貝二つの下に鳥を書いた漢字。ウグイスのことです。
「觧」は解のこと。馬琴の本名は滝沢興邦ですが後に、滝沢解(とく)に改名しています。

というわけで、ざっくり訳してみますと。
「潜確居類書」によると画眉鳥はウグイスに似た小さな黄黒色の鳥で、その眉は描いたみたいである。鳴き声はモズに似ている。画眉鳥はホオジロのことだという先達もいるが、ホオジロとは別物である。

一巻のホオジロのところでも同じようなことを馬琴は注釈しています。
こちらが『禽鏡』一巻の頬白。
Gabicho_32kinkyohoojiro_32kinkyo
確かにこの絵を見ていると頬白と画眉鳥は違いますね。

『禽鏡』に収録された絵はどれも素晴らしいのですが特に惹かれたのが二巻のミミズク。
Gabicho_32kinkyomimizuku_32kinkyo
目を細めたような表情も毛の描き方の細やかさもたまりません!
どことなくバリ絵画を連想してしまうのは私だけでしょうか。

四巻のシロガラスにも感動しました。
というのは馬琴の日記で鈴木牧之(『北越雪譜』の著者)からシロガラスの絵を受け取ったことが書かれていたのです。
それを模写させたものなのですね。
Gabicho_32kinkyoshirogarasu_32kinky

添えられた解説文は。
白鴉 シロカラス。
天保三年壬辰夏四月上旬越後州魚沼郡塩沢ノ里人鍵屋治左衛門ト云フ者ノ居宅ノ裏ナル樹ニ鴉巣ヲ締ヒテ雛三隻ヲ生ス。其中ニカクノ如キ白鴉一隻アリ。主人コレヲ瞻(み)テ人に竊(ぬすま)レンコトヲ怕(おそ)レテハヤク樊畜シタルヲ同郷ノ長鈴木牧之写生シテ予ニ贈レリ。初ハ咮(くちばし)と足ト薄紅ナリシニ生長ニ従テ皆白色ニナリシト云。全図疎画ナレバ赫洲ノ再募(←この字はっきりわかりません)シタルナリ 觧云。


天保3年4月に新潟の魚沼郡塩沢で鍵屋治左衛門が発見した白いカラスを鈴木牧之がスケッチして、馬琴に送り、それを渥美覚重が模写したということなのですね。

曲亭馬琴日記で牧之から白烏のスケッチをもらったくだりは以下になります。

天保3年6月26日 牧之方より、当春、近所に白烏出生のよし、図しておくらる
天保3年6月27日 覚重よりかり置候衆鳥写真巻物返却、ならび、右の内写しもらひ度分100余種、書賃わたしおく。ほかに越後牧之より写し来候白鳥の図も写し呉候様、申談じ、わたしおく。


『曲亭馬琴日記 第三巻』新訂増補 柴田光彦(中央公論新社 2009)p145~146より。
※漢数字をアラビア数字に、旧字を新字にほか、読みやすく私がかえているところがあります。

※渥美赫州は出版物では「州」と表記されているものが多いですが、『禽鏡』で馬琴は「洲」と書いていますのでこの記事内では両方混在となっています。

shine『禽鏡』は素晴らしいので、ぜひぜひ現代語訳付きで出版してほしいです。手元に1冊ほしいですshine

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emi (秋田恵美)

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。
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