江戸時代のガビチョウシリーズ(その3)松平頼恭侯の『衆禽図譜』も素晴らしいです
画像なしで文章のみのご紹介になります。
私が通し番号8zを振った『衆禽図譜』も素晴らしいです。
『衆禽画譜』
讃岐高松藩五代藩主松平頼恭(よりたか)(1711~1771)の命で制作された鳥類の図譜。
制作年代、作者は不明。
水禽帖(85図)と野鳥帖(74図)の合計159図を収める。
画眉鳥は野鳥帖に収録あり。
「科学的な正確さと、大名道具に相応しい優美さをそなえた図譜」
(↑所蔵者の松平頼武氏
の言葉。下記の『高松松平家所蔵 衆禽画譜 水禽・野鳥』より)
この図譜の全図は
『高松松平家所蔵 衆禽画譜 水禽・野鳥』
香川県歴史博物館編集(香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会 2005)に収録されています。
要約でご紹介します。引用部分は青文字。
『高松松平家所蔵 衆禽画譜 水禽・野鳥』は
高松松平家所蔵の『衆禽画譜』の水禽帖と野鳥帖の全図(159図)を収録した本。
『衆禽画譜』の製作年に関しては。
熊本藩主細川重堅が作らせた鳥類図譜「遊禽図」に、
高松藩の図譜を転写したことを記した宝暦5年(1755年)の墨書がある
ことから、宝暦5年以前と推察されています。
作者に関しては。
当時高松藩に仕えていた平賀源内が関わったのではないか。
絵師は源内と親交のあった楠本雪渓(宋紫石)や
雪渓の弟子であった讃岐の三木文柳などの可能性があるがまだ特定するのには至らず。
同書に収録の今橋理子氏の論文
「『衆禽画譜』と飼鳥愛好の時代」も興味深いです。
以下同書p108~109から抜粋引用。
頼恭にとっての最も重要な学問---
それは藩政の基幹をなす殖産興業に直結する本草・博物学あるいは物産学であった。
彼の行状を現在に伝える『穆公遺事』に、それを詳細に物語る有名な一節がある。
「一、物産の学問御好み被成、草木鳥獣・金銀玉石・骨角羽毛に至る迄
種々御鳥集、唐土・朝鮮・琉球・紅毛に至る迄の産物御取揃へ被成御箱組に被成被置、
(中略)一、草木鳥魚は画工に命せられ真物を以て正写し被 仰付、漢名和名御正し被成候」
(以下私による略)
これを読みますと、
松平頼恭侯はいろんな図譜を集めて「模写」させたのではなく、
画工に命じて現物をスケッチさせたのですね。
今橋氏は151品種すべてを手描きで仕上げた『衆禽画譜』を、
今日伝存する江戸時代鳥類図譜の中で、最も豪華な出来栄えを誇るものの一つ。
鳥の翼や羽毛、嘴や脚部の皮膚の状態など極細部にまで至る、画家の恐るべき集中力と再現力
と述べ、この画譜の鳥が模写されたことを語っています。
その2つを挙げると。
●『遊禽図』細川重賢(しげかた)。宝暦5年(1755年)頃成立。
合計26図のうち20図が『衆禽画譜』の模写。
私メモ/画眉鳥のスケッチはなし。
●『禽譜』堀田正敦。
文政13年(1830年)頃。
複数、模写あり。
松平頼恭を「讃岐候」として記述。
一例を私が自力でみつけてみました。「おほはむ」です。
(↑『禽譜』堀田正敦編より「おおはむ」 画像提供:東京国立博物館)
左下に讃岐侯蔵図と記されています。
『衆禽画譜』ではオゝハムと記されて描かれています。
今橋氏の論文で、
えっ!!と驚いたのは
この図譜は博物的なものだけではなく、松平頼恭が「鳥を食す」のが好きなため、
食材図鑑の意味合いもあったのではと言及されていることです。
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さて、自ら鳥図鑑『禽鏡』を著した曲亭馬琴(滝沢馬琴)はこの『衆禽画譜』を知っていたのでしょうか。
言及した資料・論文を発見できていません。
私が曲亭馬琴日記や馬琴関連資料を調べた範囲では松平頼恭の『衆禽画譜』を見たという記述をみつけられていません。
ですが、私自身は見ている可能性ありと思います。
なぜかというと
・讃岐高松藩家老の木村黙老(もくろう)と馬琴は親交が深く、本の貸し借りを頻繁におこなっていた。
(黙老が生まれたのは松平頼恭没後)
・曲亭馬琴日記に、木村黙老所蔵の「衆禽図」を借りる記載が出てくる。
(天保5年4月26日、5月8日、10月12日、15日)
・「衆禽図」だけだとこれが『衆禽画譜』と一致するかわかりづらいですが、
天保5年10月24日の日記では「衆鱗図」と書き間違えしている。
「衆鱗図」は『衆禽画譜』とならび松平頼恭の命によるもの。
(ただし、『禽鏡』にでてくる画眉鳥の絵は、『衆禽画譜』の画眉鳥とは違います)
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私メモ/『穆公遺事(ぼっこういじ)』の穆公は松平頼恭侯の諡号。
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