馬琴と画眉鳥シリーズ(その3)半分解決。馬琴が『禽鏡』の刊行広告を何に出したのか
画眉鳥調べ、継続中。
今、一番気になっているのが、馬琴が出したという『禽鏡』の出版予告です。
『随筆滝沢馬琴』(真山青果著 岩波文庫 2000年)にこんな記述があるのです。
『八犬伝』の第八輯か九輯かの奥附に、馬琴は諸鳥飼養法の広告を出し、
薩摩老侯栄翁の諮問をうけていることや、彼の後年に『禽鏡』なる著作があって、
鳥類数百種の精密なる図譜を編述しているのを考えても、
彼の青年時代などにあるいは鳴禽飼養を試みた時期があったかも知れない。 (p166より)
また、鈴木道男氏が論文「馬琴の鳥研究(1)『八犬伝』と鳥」内で上記の真山氏の記述を紹介し、
筆者はかねてから『八犬伝』の種々の版に当って探しているが、かかる広告を見出すには至っていない。
(『国際文化研究科論集』東北大学大学院 第十八号 p47)と書いているのです。
迷宮入りを嫌い、足でコツコツ探し当てるのが好きな「刑事(デカ)魂」を持つ私は、この広告を探しあてたくなり・・・。
重要な手がかりを『馬琴書翰集成 第一巻』(
滝沢馬琴著 柴田光彦・神田正行編 八木書店 2002年)に発見しました!!
文政13年3月26日馬琴が篠斎に宛てた手紙の中です。
『八犬伝』七輯下帙の簡端、闘牛考の附録に、
ちぬの略説を書あらはし、又「衆鳥図説」といふ拙著の書名を、
西村やの合巻中、目録の部へ加入いたさせおきたり。 (私による略)
右之著述の志はありながら、年々書肆より被頼候戯作ものに追れ、
いつ稿し可申哉、難斗候。
なれども、手透を得候はば、著し可申物に候へば、書肆の好に任せ、先署名のみ著し置候事に御座候。
(p280より)
私の推測ですが、おそらく真山氏はこの馬琴の文章をどこかで目にして、
八犬伝に広告が出たと思ったのではないでしょうか。
ちぬの略説を書あらはし、で文章は切れているはずです。
つまり、「衆鳥図説」の広告が出ているのは西村やの合巻。
ざっくり訳しますと、
「衆鳥図説」を出版したいと思うけれど依頼される戯作ものの執筆に追われて、なかなか原稿が進まない。
けれども手が空いたら著わしたいと思っているので、まずは書名を近刊予告として西村屋の合巻の目録に加えた。
鈴木氏が八犬伝を探してもみつからないはずです。
さっそく
国立国会図書館、早稲田大学図書館、専修大学図書館他を「永寿堂」「西村屋屋八」「合巻」などのキーワードで調べてみました。
文政10年~天保4年頃の西村屋の合巻をデジタルライブラリーで閲覧。
こちらは文政9年に西村屋与八から出版された合巻『還魂紙料』。
こんな風に巻末に近刊広告が出ているのですね。(クリックで拡大します)
(↑国立国会図書館デジタルコレクションより)
結論としては、「衆鳥図説」の書名の広告はみつけられませんでした。
ですので半分だけ解決。
※ネットで閲覧できない合巻もあったので、
あらためて図書館に出かけた時にとりこぼしている合巻をチェックしようと思います。
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