星のささやき---その23.1800年代初頭、ゲデンシュトロムの体験
星のささやきシリーズ、久しぶりのアップです。
1800年代初頭、北極海へ探査に出かけたロシア人の記録に「星のささやき」現象の記述をみつけました。
※現象については書いていますが、「星のささやき」という呼び方は使っていません。
1) 原典→未見
2) 引用したロシア語文献→閲覧済み
3) 2)を翻訳した日本語文献→閲覧済みまずは前説を。
ゲデンシュトロムはノボシビルスク諸島探検隊の隊長として北氷洋(シベリア北東方)の調査を行います。
1809年1月、ウスチ・ヤンスクに向かう旅の中で、星のささやき現象を体験。
それを1)に執筆しました。では2)の文献から該当部分をピックアップします。
Cтужа была прежестокая.
Пар, исходящий
изо рта, замерзал и превращался в ледяные
пылинки,
которые от прикосновения друг к
другу издавали треск наподобие шума,
происходящего от сена, когда его
ворочают.
3)の文献から日本語訳を引用します。
寒さはとくにきびしく、口からはき出される息は氷の塵のようになり、
それが互いに触れ合うと、干し草を動かす時のような音をたてた。
いかがですか。
口から吐き出される息が音を立てる。その音は干し草を動かすような音である。
この2点から「星のささやき」現象であることは間違いないでしょう。
1)の原典は。
「Путешествие Геденштрома по
Ледовитому морю и островам оного, лежащим
от устья Лены к востоку
(私メモ/ゲデンシュトロムによるウスチ・レナの東方にある北氷洋と島々の旅行記の意味)」
掲載は雑誌『Сибирский вестник(私メモ/シベリア報知、シベリア通報の意味)』
17号,1822年p112-113。
2)の引用文献は。
『Находки, которые открывают тайны(私メモ/「謎を解いた発見」の意味)』
ワシリー・パセツキー著。
(Транспорт 1964)。該当ページはp59。
3) 2)の翻訳文献は。
『極地に消えた人々ー北極探検記』加藤九祚訳(白水社 2002)p63より。
加藤氏はシベリア北方を探査した人々の史料を精力的に訳され、
またレーリヒに関する著作もあり、私にとって非常にありがたい研究家でいらっしゃいます。
私メモ/人名を日本語ロシア語英語表記で。
マトヴェイ・マトヴェーヴィチ・ゲデンシュトロム(1780-1845)/
Матвей Матвеевич Геденштром/Matvei Matveyevich
Gedenschtrom
ワシリー・ミハイロヴィッチ・パセツキー(1920-2001)/
Василий Михайлович Пасецкий/Vasily Mikhailovich Pesetsky
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こんにちは。1,2か月前にコメントを書かせていただきました。
国立極地研究所で気象の研究をしているものです。
現在、南極の内陸域の気象の記事を連載で極地研究所の広報のページから公開しています。その第一段目に「星のささやき」現象を書いています。原稿を書く際に国内でこの現象がどのように知られるのかなとインターネットを探していたのです。そうしたところ、ここでこんなに沢山の情報に出会いました。
私の原稿は今日から公開されました「ドームふじの特別な気象のはなし」というタイトルです。
そこでここの第一回目の「星のささやき」のページを紹介しています。お知らせしておきます。
星のささやき—その1.ロシア語編(http://hoshi-biyori.cocolog-nifty.com/star/2009/01/—-3cc4.html)
投稿: 平沢尚彦 | 2025年6月23日 (月) 12:32
平沢尚彦さま
先日は興味深いコメント、かつ、調べ者冥利に尽きるコメントをお寄せくださりありがとうございました。
極地研のウェブマガジン「極」のhttps://kyoku.nipr.ac.jp/article/4429
「ドームふじの特別な気象のはなし 星のささやき」 執筆平沢尚彦氏をさっそく拝読させていただきました。
大変興味深かったです。
南極でのマイナス70度を下回る実体験。
炭酸水のシュワーに似た、星のささやきの音。
何が星のささやきの音を発しているかの考察etc.
私は文献で想像するだけで、星のささやきを実際にきいたことがないので、
平沢さんの描写でさらに想像することができました。
そして、このブログをご紹介くださり本当にありがとうございます。
文献の中には所蔵が極地研図書室だったもの(極地研が所蔵してくださってありがたかったでした!)もあったので、立川にうかがったこともございます。
「極」これからも拝読させていただきます。
ご紹介くださり、ご連絡くださり本当にありがとうございました。
投稿: emi | 2025年6月23日 (月) 17:09