月と文学/枕草子(その1)
月のことを調べています。枕草子に出てくる月に関するくだりをピックアップしてみました。
※引用部分は原文は青文字。現代語訳は紫。注釈は緑。
※出典『枕草子 上』全訳注 上坂信男/神作光一(講談社 1999)
※私が気に入ったものにマークをつけました。
1 春は曙
夏は夜。月の頃はさらなり。
闇もなほ、蛍の多く飛ちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りていくもをかし。 P14
夏は夜。
月のある時分は、月のない闇夜でもやはり、蛍がたくさん乱れ飛んでいる風景。
また、ほんの一つか二つなど、かすかに光りながら飛んで行くのも、趣がある。 P16
34 七月ばかりいみじう暑ければ
七月ばかりいみじう暑ければ、よろづの所あけながら夜もあかすに、
月の頃は寝おどろきて見出だすに、いとをかし。
闇もまたをかし。ありあけ、はたいふもおろかなり。 P178
七月頃は大変暑いので、あちらもこちらも開けたまま、夜も戸締りせずに朝を迎えるのだが、
満月の前後は、眼を覚まして外を見ると大変美しい。
空に月のない下旬の闇夜もまた初秋らしくてよい。
有明月が空に残っているのもまた、いうまでもなくよい。 P180
43 にげなきもの
にげなきもの 下衆の家に雪の降りたる。
また、月のさし入りたるも口をし。
月の明きに屋形なき車のあひたる。 P223~224
ふさわしくないと思うものは。
身分低い者の家に雪の降り積もっている光景。
また、月光の差し込んでいるのも、場違いの感じがして残念だ。 P225
94 職におはしますころ
職におはします頃、八月十余日の月明かき夜、右近の内侍に琵琶ひかせて、端近くにおはします。
これかれ物言ひ、笑ひなどするに、廂の柱によりかかりて物も言はでさぶらへば、
「など、かう音もせぬ。物言へ。さうざうしきに」と仰せらるれば、
「ただ秋の月の心を見侍るなり」と申せば、
「さも言ひつべし」と仰せらる。
中宮様が職においでのころのこと、八月も十日を過ぎて、月の明るい夜に、
右近の内侍に琵琶をお弾かせになり、御自身は端近くにいらっしゃる。
女房たちはとりとめないおしゃべりをし、笑ったりしているのに、
私が廂の間の柱によりかかって、なにも言わずにいますと、
「どうして、そのように黙っているの。なにか話しなさい。あなたが黙っていると淋しいから」と中宮様はおっしゃる。
それで、「ただ秋の月の心を見ているのでございます」と申し上げると、
「いかにも、言い得たことだね」とおっしゃった。 p454~455
余説p455によると。
清少納言が、左遷中の白楽天が、月明の夜、客を送って、
舟中に琵琶を弾ずる女性を見出したことを吟じた「琵琶行」の情景と重ねて、
琵琶の音色に酔いしれて一言も発せず秋月を眺めていたようです。
私メモ/清少納言のツンデレを感じます。
中宮やみんなが盛り上がるけど、私はそんなのには加わらないのよ。で
も中宮はその私を気にかけて、話しかけてくるのよ。
私の返した言葉を「言い得てる」と感心されたのよ。
と自慢しているようにきこえます。
中宮は一条天王のお后、中宮定子のこと。
----ただし書き----
※漏れ、誤字などがみつかれば随時加筆修正します。
※月に関する記述でもわずかなものは省いているものもあります。
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