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2016年7月14日 (木)

広重「永代橋 佃しま」の描かれた日を推測する(その4)広重はあの星を描いていた?!

(その3)ではステラナビゲータで安政の星空を再現、候補日を挙げてみました。
この(その4)では江戸時代の文献からそれぞれの日の天候を割りだし、
月が見えなかったであろう日(雨や曇り)を除外。
候補日を絞り込むと以下のようになりました。

1854年(安政元年)
○12月29日(旧暦11月10日)20:24 晴れ 寒い

1855年(安政2年)
○1月26日(旧暦1854年12月9日)19:04 晴れ(雪がちらつく時間あり)
△1月27日(旧暦1854年12月10日)19:54 晴れ 北風強い
△1月28日(旧暦1854年12月11日)20:44 晴れ

--11月11日(旧暦10月2日)安政江戸地震---

△12月18日(旧暦11月10日)19:50晴れ ただし地震あり。
  大地震の恐怖が残るのに地震があった日に水辺まで行かないのでは。
○12月19日(旧暦11月11日)20:40 晴れ

1856年(安政3年)
○1月15日(旧暦1855年12月8日)18:50 晴れ
○1月16日(旧暦1855年12月9日)19:30 晴れ
○1月17日(旧暦1855年12月10日)20:20 晴れ 寒い

○2月14日(旧暦1月9日)19:10 晴れ ただし地震あり。

--8月25日(旧暦9月23日)江戸の大風水害 永代橋半壊--

△12月8日(旧暦11月11日)20:50晴れ 強風 寒い

1857年(安政4年)

○1月4日(旧暦1856年12月9日)19:00 晴れ 寒さが厳しいという記述も
◎1月6日(旧暦1856年12月11日)20:30 曇りのち晴れ
◎2月2日(旧暦1月8日)18:40 晴れ
◎2月3日(旧暦1月9日)19:20 晴れ
◎2月4日(旧暦1月10日)20:20 晴れ
△2月5日(旧暦1月11日)21:20 晴れ
△3月4日(旧暦2月9日)19:09  晴れ のち曇りか

私が主観でこの日かな~と思うのは
◎にした日です。どんな星空かは(その3)をご覧くださいね。

特にこの日では!と私が勝手にあげてみますと。
(以下画像はクリックで拡大します)

◎1月6日(旧暦1856年12月11日)20:30 曇りのち晴れ
1857_0106_old1211_20303076

1857_0106_old1211_20303076_2

暗い星を増やすと
1857_0106_old1211_20303076_3

◎2月4日(旧暦1月10日)20:20 晴れ
1857_0204_old0110_20203581

1857_0204_old0110_20203581_2

1857_0204_old0110_20203581_3_2

が広重が描いた星空に近いような気がします。

さて、今回、広重が描いた月からいつの日か特定しようと思って調べ始めただけで、
まわりの星がなんの星か特定できるとは思っていませんでした。

ところがステラナビゲータで星空を再現してみて、
ある発見をしたのです。予想外のことでうれしくなりました!!

それは、いろんな候補日すべてにわたることなのですが。

広重がオリオン座を描いていた!!

のではということです。
少なくとも、広重がオリオン座の形を認識していたかはわかりませんが、
オリオン座を見ていたことは間違いないのです。
旧暦11月~3月。南の空に作品に描かれたような月が架かる時、必ずそばにオリオンがいるのですから。

「永代橋 佃しま」の星空のこの部分。
Hiroshige_eitaibashi_orion22

赤と水色で星に印をつけると。
Hiroshige_eitaibashi_orion_2
三つ星とリゲルに見えませんか?

↓こちらは私がステラナビゲータ&ペイントでオリオン座の主な星を記したもの
Orion2

注目は。広重はオリオン大星雲も描いているように見えませんか?

「ならば、ベテルギウスはどこ?」「オリオンが見えるなら昴は?」「牡牛座のVマークは?」
ほか疑問も出てくるところではありますが…。

また、決して満天の星が描かれていないことも謎。
A)星がたくさんありすぎて、広重は簡略化して描いた
B)60歳を越えて視力も弱まっているために、明るい星しか見えなかった

どちらなのでしょうか。

とはいえ、広重はオリオンを見ていたのは間違いないでしょう。
今回、ステラナビゲータで星空を再現することは、ただ、<描かれた日を推測する>だけではない
多くのよろこびがありました。

「こんな星空だったのかな」と江戸時代のいろんな日の夜空を再現しながら、
広重と一緒に星空を眺めているような気分になりました。

さて、広重が「名所江戸百景」シリーズを手がけたのは、
安政大地震から江戸の人たちが復興する祈願をこめたいたのではという説もあります。

(その5)では
実際に見て描いた景色ではないのかも。

を取り上げます。

----天候を調べた文献----

『瀧澤路女日記 下』滝沢路[著]柴田光彦 大久保恵子編(中央公論新社 2013)
『鷹見泉石日記 第八巻』鷹見泉石著 古河歴史博物館編(吉川弘文館 2004)
             (江戸に所用で来た部分)
『岩井孫六江戸日記』
『遠山金四郎家日記』岡田寛徳編(岩田書店 2007)
『柴田収蔵日記』(平凡社 1996)
『梅若実日記 第1巻』(八木書店 2002)
『浅草寺日記 第27巻』(金龍山浅草寺 2007)
『鈴木三右衛門日記』(東京都 2008)(at深川材木町)
『幕末旗本の記録山口直養・直毅日記』(東京都 2010)
『公私日記』鈴木平九郎[著](立川市教育委員会 2014)(at立川)
『石川日記』石川喜兵衛[ほか]著(八王子市郷土資料館)(at八王子)

江戸後期の気象を調べる時、一番強力なのは「霊憲候簿(れいけんこうぼ)」なのですが、こちらは安政元年まで。
そこで当時の江戸の町に住む人たちの日記を閲覧。
二月九日 晴れ というような天気の記述をチェックしました。

立川と八王子での記録も近隣ということで参照しました。

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月見るシアワセ」カテゴリの記事

コメント

emi さん

お久しぶりです☆

暑い日が続いておりますが、お変わりありませんか?

昨夜、宇宙ステーション「きぼう」を観ました。
(たぶん、そうだと思います)

下記のHPの方角と時刻を参考にしながら。
http://kibo.tksc.jaxa.jp/letsview/visibility1/tsuruoka/index.html

emiさん、「きぼう」は目にされたことありますか?

おんぽたんぽさん。私の方こそごぶさたしています。
「きぼう」をご覧になったのですね!

私もたぶん見たことあります。空を眺めていてあれ!と思って時間と方角などを調べたら一致していたので。

うれしくなりますよね!

emi さん

さすが、emiさん!

やはり「きぼう」、ご覧になってましたか。^^

私は、生まれて初めて、地元でも「きぼう」を観る事が
出来ると知りました☆

と言うか、地球上から肉眼で観る事ができると
思ってませんでした。^^ 感激でした!!!

emiさんが、ご紹介されている
「カロリーヌ つきへいく」も、家にあります。
図書館の整理で、無料で頂いてきました。
外国人の方の多読用にと。

と、今起こったことじゃないのに
今頃気づいている、スローな私です。

emiさん程、空を見上げていたら、
視力もよくなるんじゃないかと思いつつ
今日は、この辺りで終わらせて頂きます♪

まあ!! おんぽたんぽさん、「カロリーヌ つきへいく」を入手されていたのですね!!

動物も漫画チックになるのではなく、しぐさがうまく絵に活かされていてかわいいですよね!

一番大好きな絵本の一つです。

遠くで光るものを見ることはきっと目のストレッチになっていいはずと私も思います♪

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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