架谷庸子さんによる雪華紋のお皿をタイムスリップして見せたい人は
こちらでご紹介した架谷庸子(はさたにようこ)さんによる雪華紋のお皿。
200年弱前の江戸時代にタイムスリップして土井利位侯と鷹見泉石にお見せしたいと思うのですが、
もう一人、お披露目したい方がいます。
それは、「雪は天からの手紙」の言葉でおなじみの雪の研究家、中谷宇吉郎氏です。
といいますのは、中谷宇吉郎氏は赤絵細描(あかえさいびょう)と深い関係があるからです。
宇吉郎は石川県出身。
赤絵細描は九谷焼の技法のひとつ。九谷焼は石川県。
というつながりだけではありません。
宇吉郎は、小学生の頃、赤絵細描の名手「浅井一毫(あさいいちもう)」の元に預けられていたのです。
宇吉郎は浅井一毫について『九谷焼』という随筆の中で語っています。
以下、『中谷宇吉郎随筆集』樋口敬二編(岩波文庫 1988)より。
引用部分は青文字。
浅井一毫について
私は小学校へは入るために、八つの春、大聖寺町の浅井一毫という陶工の家に預けられた。
その頃七十幾つかで、白い鬚を長く伸したよいお爺さんであった。 (p87より)
一毫のお爺さんは、赤絵が専門だった。殊に竜が得意らしかった。
「魑魅を画くは易し」ではなく、お爺さんの描いた竜を毎日見ていると、
本当にいてもよいような気がするほどだった。 (p87より)
赤絵について
その頃、「真正」の九谷焼を護る人々の間には、青絵と赤絵とが、先ず試みられていた。
特に赤絵の方が盛んだった。(私による略)
赤絵という方は、朱で極々細く念入りに描いたもので、
これには必ず金が使ってあるのが普通だった。
少し離してみると、薄赤色に見えるほど細く井桁を組んだり、七宝で埋めたりするのが特徴といえる。
西洋人が家へ来て、手で描いたのではない、判で押したのだといって、
どうしても聴かなかったことがある位である。 (p87~88)
というわけで、宇吉郎は赤絵細描作品をごく間近で見ていたのです。
だからこそ、赤絵細描で描かれた雪の結晶の作品を見せてあげたい!!
架谷庸子さんのモチーフは雪華だけではありません。
伝統的な柄から、創作のモダンな小花やリズミカルな幾何学模様など。
けれど、<宇吉郎を輩出した石川の大地で赤絵細描で雪華紋を描く作家さんが現れた>
それは天が仕組んだ必然のような気持ちがするのです。
※宇吉郎の随筆『久谷焼』はネットの青空文庫で閲覧できます。
ttp://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/53228_49814.html
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