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2023年11月16日 (木)

しびれる『葬送のフリーレン』(その1)OP曲『勇者』。膨大な時間の圧倒的な喪失感。その中にある、君を忘れない、という強い意思。

連載はまったく知らなかったのですが、金曜ロードショーで初回をみてから、アニメ『葬送のフリーレン』にはまっています。

以下ネタバレですので、まだご覧になっていない方はご注意ください。

YOASOBIによるOP曲。
メロディーもさることながら、Ayaseによる歌詞の神がかりぶりがすごすぎます。

この楽曲に感じるのは、
「今、君はいない」という圧倒的な喪失感。
無常感。
膨大な孤独の時間。

その中ではるか昔だけど、ほんのつかのまだけど、
かけがえのない時間。
フリーレンが仲間、とりわけヒンメルを想う気持ちが意地らしいほど胸に染みる曲。

Ayaseがすごいと思うのが、
決して、「もう一度会いたい」とか、「好きだった」とか、「さみしい」とか、「今でも大切に思っている」
とか直接的な歌詞を入れこまないこと。

愛してるという言葉を使わずに、いかに「愛している」ということを伝えるのかが、
歌詞や脚本で大事と聞きますが、まさにお手本のような歌詞。

感情を直接表現する歌詞はないけれど、
「同じ途(みち)を選んだそれだけだったはずなのに」という言い方で
この旅がかけがえのないものになったことを表現。

ともにたたかった軌跡をもう一度、フリーレンが辿りたいと思うこと。
ヒンメルたちの功績が時の流れで風化しても自分は忘れないという強い意思。
平和がヒンメルたちの功績のおかげで成り立っていると覚えていること。

また、ヒンメルが銅像をつくるのはナルシストだからではなく、遺されたフリーレンがその膨大な時間の中で
さみしくないようにするため、とフリーレン自身がわかっていること。

これらのことを歌詞にすることで、「もう一度会いたい」の言葉がなくてもフリーレンがヒンメルをいかに想っているかが伝わってきます。


振り返るとそこにはいつでもやさしく微笑む君がいる
「すごく昔のことなのに、フリーレンさん。あなた、ヒンメルをどれだけ思っているのですか~」とひやかしたくなるくらい。
(フリーレンにとって80年前は私たちの8年前ぐらいの感覚で、長い間、ですごく昔ではないのかもしれませんが)
それでも、歌詞で、けっしてフリーレンに「会いたい」と言わせないAyase。

本編で、実際にフリーレンがヒンメルと一緒にいた時、淡々としていて、ツンデレ状態であったからこそ、
歌詞でも、「もう一度会いたい」や「さみしい」という言葉がないことが、
Ayaseが、フリーレンを理解しつくして、この曲を作っていることがわかります。
感情的な言葉がないことで、フリーレンが自分に起きている生々しい感情が理解できずにいるエルフであることを巧みに私たちに伝えています。

第10話で、ヒンメルたちがフリーレンを仲間に入れようと思った時。ハイターはフリーレンの魔力は自分の5分の1ぐらいと見立てます。
でもヒンメルは「いや 君は僕が出会ってきたどの魔法使いよりも強い。なんとなくだ」と答えます。
ヒンメルが「なんとなく」フリーレンが強いと思ったと答える場面がありますが、

直感的に魂の部分でつながっていたということでしょう。
生きて接している間は、けっして、両想い的な感じではなかったですよね。
だからこそ、生きている時にその想いを伝えられなかったというせつなさ、心のすれ違い感がこの歌詞から感じられて、刺さります~。

この『勇者』は、『葬送のフリーレン』の世界観や、フリーレンの想いを3分24秒に凝縮するとともに、
私たちが自分の身の回りのことに置き換えられる普遍的な内容にもなっているのも、聴いてひきこまれるポイントです。

たとえば、♪くだらなくて思わずふっと笑ってしまうようなありふれた時間が今もまぶしい

私の場合。高校時代、部活の合宿の休憩時間にドッジボールみたいなことをして、ワーキャーした時などを思い出します。
制服のスカートで。ソックスははかなくて、はだしで。体育館の床の感触。飛び回ってスカートのすそが足をさわる感触。

亡くなった飼い猫と、おでこをくっつけあって遊んだ時とか。

最近では、コロナ禍前。マスクをせず、青いメガホンを振って大声出して、試合の応援をして一緒に盛り上がれた時間とか。

『勇者』は、少し呪文のような、速く変則的なリズムとメロディーもナイス。

オフィシャル・ミュージックビデオの映像も後光が刺すすばらしさ!
時折、切り絵のようなカットや、飾り枠のようなものが、子供のころに読んだおとぎ話のような雰囲気を高めます。

そして、勝手な解釈なのですが。
最後に手前から赤い鳥がはばたくと、緑の大地に花が咲く。という場面。
あの赤い鳥は、やっと天寿をまっとうしたフリーレンなのかしらと。
だから、まだ鳥に転生しても魔法が使えて、花畑に変えられる。
そして、その鳥の周りに3羽の鳥がやってくるのは、ヒンメル、ハイター、アイゼンで、
みんなで長い時を経て、再会できたのかなあと。
となると、一番最初に出てきて、ヒンメルの像に留まる赤い鳥も転生後のフリーレンでしょうか。
(途中に出てくる赤い鳥は無視)

この3分24秒の楽曲と映像だけで、フリーレンの長い人生(エルフ生)を描いた1本の映画を観たような感覚になるのですが、
映画『タイタニック』をふと思い出します。
ローズがジャックと一緒にいられたのは船上でのほんのわずかな時間。
でも、ジャックが自分の命とひきかえに助けてくれたことで、ローズは死んで天国でふたたびジャックに会えるまでの遺された時間。
人生をできる限り謳歌しようと思ったのですよね。

一緒にいる時間がわずかであっても、すごく昔のことであっても、そのひとときが色あせず、宝物となって心の中に生き続けている。
そんな記憶を持つすべての人(おそらく人類全員)が共感できる、2023年からあとの未来永劫、生き続ける1曲だと思います~

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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