星のささやきシリーズ(その26)藤井旭氏の『星の旅』。日本で「星のささやき」に触れた先駆けかも
日本で「星のささやき」現象を多くの方が知るきっかけになった本はなにか。
林完次氏の『宙ノ名前』(1995)や、『地球の歩き方 シベリア編』かしらと思います。
ですが、これらの本の出版以前に「星のささやき」について述べている本がありました。
『星の旅』藤井旭著(河出書房新社 1976)です。![]()
藤井旭氏といえば、天体写真家の草分け。
天文年鑑、四季の星座の本などで、星に関する本を手に取った誰もが一度は藤井氏の本を読まれたことがあると思います。
その藤井氏の『星の旅』(1976 河出書房新社)に星のささやきの章(p73~78)があるのです。
抜粋でご紹介します。
引用部分は青文字。
藤井氏はソ連(まだロシアになる前です)のバイカル湖地方を訪ねた時、
ガイドのターニャさんからシベリアの星の話をうかがいます。
その時、ターニャさんが
「私、星のささやきを聞いたことがあるわ」と口にしたそうです。
藤井氏が驚いて聞き返すと、ターニャさんが語り始めます。
ターニャさんから聞いたことを藤井氏はこう記しています。
彼女のおばさんは東シベリアのベルホヤンスクの近くに住んでいて、
彼女はそこで冬の休暇をすごしたことがあるのだそうである。
そこではあまりの寒さに自分の吐く息が耳のあたりでいきなり凍ってしまい、
それが枯葉か穀物でもまき散らしているように、
カサカサ音をたてるという。
そのはく息の凍る音を、この地方の人々は”星のささやき”とよんでいるというのである。
藤井氏は星のささやきと呼ばれる現象があることは初耳であるとも記しています。
とても興味深い点が3つ。
①ベルホヤンスクは北半球の最も極寒の地ともいわれ、ある意味「星のささやき」のメッカ。
ターニャさんはこのメッカで星のささやき体験をしたということ。
②ターニャさんが、星のささやきの音を、枯葉か穀物をまき散らしたようなカサカサ音と表現したこと。
他の文献の星のささやきの音の表現ととても類似しています。
③息が凍った音と思っていること。
これもいろんな文献と共通。
日本で「星のささやき」を紹介した文献では
『寒極シベリア』岡田安彦著(1975 世紀社)(詳細はこちら)の方が出版が先ですが、
専門的な本で、広く一般に読まれる文献ではなかったのかしら、と。
『星の旅』は天文に興味を持ついろんな方が手に取ったはず。
そこに書かれていた「星のささやき」現象を初めて知って、
インパクトを感じた方が多いことでしょう。
『宙ノ名前』刊行の20年近く前のことです。
日本に「星のささやき」現象を伝えた先駆けと言っていいでしょう。
『星の旅』。
1986年版、2023年版(文庫)も出版されています。
私は1976年版を閲覧。
1986、2023年版は未見なのですが、
目次をみると「星のささやき」の章がありますので、
こちらにも掲載されているのではと思います。
星のささやきシリーズINDEXはこちら
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