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2026年9月20日 (日)

素敵な言葉(その10)西向く士(にしむくさむらい)

西向く士(さむらい)という言葉をご存じですか。
昭和世代は学校で教わるのか家で自然に触れるのか、ご存じの方は多いと思うのですが、
今の令和世代はどのくらい知っているのでしょうか。

これは、現在の暦(太陽暦)の小の月の覚え方ですね。

「西向く士、小の月~」

31日まである大の月が1、3、5、7、8、10、12月。
30日以下の小の月が2、4、6、9、11月。
そのため、に、し、む、く、とあてはめていきました。
11月が「さむらい」なのは漢字で士と書くと「十」「一」になるからですね。

ほんとによくできていると思います。
私は時々3月が30日までか31日までかわからなくなってしまうことがあります。
そんな時、「にしむく・・」と唱え、3月が小の月にはいってないので31日までかと判断したりします。

さて、海外には「にしむくさむらい」のような小の月の覚え方はあるのでしょうか。

調べてみますと、ないわけではありません。

英語圏ではマザーグースの歌にもあります。
いくつかのバージョンがあるようですが、その一つを。

Thirty days hath September,
April, June and November.
All the rest have thirty-one,
Excepting February alone,
And that has twenty-eight days clear
And twenty-nine in each leap year.

ざっと訳しますと。

30日は9月。4月、6月と11月。
残りは31日。
2月だけは別で、28日。
うるう年は29日。

韻を踏んでいるので、覚えるのか簡単なのかもしれませんが、
長いですよね。

日本の「にしむくさむらい」はなんとわずか8文字で覚えられるのです。

また、歌ではく、ゲンコツを握った時の骨のでこぼこで、数える方法を使う国も。
(日本でもゲンコツで覚えている方もいらっしゃるかも)

さて、わずか8文字のにしむくさむらい。
いつ誰がこの語呂合わせを思いついたのでしょうか。

話題は少し離れて、明治5年まで使われていた旧暦(太陰太陽暦)の話を。
これは月の満ち欠けに基づいた暦で、朔(新月)の日を月のはじめのついたちとした暦です。

月の満ち欠けの周期が平均29.5日でありますが、ぶれがあるため、
新月から次の新月までのひにちがマチマチでした。

たとえば2026年を旧暦でみますと。

30日の月 1、3、6、8、10、11、12月
29日の月 2、4、5、7、9月

新月から次の新月までが31日になる日はないため、
30日まである月が大の月。
29日まである日が小の月。

毎年、大、小の月になる月が固定はしていないため、
大の月、小の月を絵に表したり、語呂合わせをしたり、
覚えやすいように遊び心を持った絵暦が作られたりしました。

絵の中にいかに大、小の月を入れこんだのか。
すみだ美術館の「読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー」が興味深いのでご覧くださいませ。
https://hokusai-museum.jp/Edocalendar/

さて、「にしむくさむらい」の語呂合わせがいつ生まれたかですが、
天保8年というのが定説です。

旧暦では毎年、大の月、小の月が変わると申し上げましたが、
天保8年がまさに小の月が、にしむくさむらいなんです。

国立国会図書館の
日本の暦→第二章 いろんな暦→大小暦
https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter2/s1.html
には、1684年~1872年までの大小の月一覧があります。

これをみますと。
小の月が「にしむくさむらい」になるのはわずかに2年だけ!
1801年(寛政13年~享和元年)と1837年(天保8年)です。

そこから、天保8年に語呂合わせで「にしむくさむらい」が作られていて、
現在の暦になった時、小の月を覚えるのをこの天保8年の語呂合わせが利用されたと言われています。

(私は、実際に天保8年に小の月を「にしむくさむらい」で覚えるように記した絵暦を発見できていません。
ですので、真偽はまだ不確か。
今後、確かに天保8年に「にしむくさむらい」を語っているという資料を発見できたら
あらためてこのブログでご紹介します)

というわけで、「西向く士」の語呂合わせがいつ生まれたのか、誰が思いついたのかは、
確信持って言えるものはありませんが、
画期的な8文字であることは間違いなし。

「西向く士」は日本が世界に誇れる発想&言葉だと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大の月が絵の中に隠されている浮世絵を1つご紹介します。
鈴木春信の『夕立』です。
(『原色浮世絵大百科事典 第五巻 風俗』を参照しました)

画像はサムネイルのため小さく不鮮明。
お手数ですがクリックorタップで拡大してご覧いただけましたら。

Suzuki_harunobu

物干しに干されている衣に明和2年の大の月が記されています。
アップで。
Suzuki_harunobu_up1
↑ 文字が見えやすく少し画像を濃くしました。

文字のところを線でなぞってみました。
Suzuki_harunobu_up2

赤い文字にしたのがメイワ二。明和2年の意味ですね。
緑色の文字にしたのは、上から、大 二 三 五 六 八 十。

つまり明和2年の大の月は2、3、5、6、8、10月と記しているのです。

上記の国立国会図書館の大の月、小の月一覧表をみますと、
確かに明和2年(1765年)の大の月は2、3、5、6、8、10月になっています。

遊び心と智恵と。
興味深いですね。

素敵な言葉INDEXはこちら

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。

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