2018年12月 2日 (日)

高橋真琴さんとロシア

ロシア語勉強仲間のOさんはロシアに関するアンテナが凄いのです。
いくつも私が知りえないロシアグッズをみつけてくださいます。

そしてまた新たに。
高橋真琴の原画展に行かれたOさんからいただきました。

高橋真琴さんといえば、私世代ではデラマ(少女漫画誌『デラックスマーガレット』の表紙の絵でおなじみ。
気品あふれ、瞳キラキラの少女、ラブリーな犬のプードルetc.の絵にうっとりでした。

ロシアがお好きでいくつもモチーフに描いていたのですね!

B5サイズのアートポスター、森の少女(白樺)とスネグーロチカ(雪娘)のポストカード。
Takahashimakoto1

白樺の間に見えるこの建物はあきらかにロシアのネギ坊主屋根の寺院ですね。
Takahashimakoto2

スネグーロチカはロシア版サンタクロース「ジェットマロース」の孫娘です。
Takahashimakoto3

↑キリル文字で、スネグーロチカ

大好きなロシア×高橋真琴さんの組みあわせにうれしくなりました

こちらはロシアのアルファベットがモチーフのマスキングテープ。
Toshiyuki Fukuda×tupera tuperaの作品のようです。

赤青白。ロシアの国旗カラーですね。

Tape1
↑布川愛子さんのぬりえ本のマトリョーシカのページに
А(アー)からЯ(ヤー)まで並べてみました。

Tape2

Tape3

Tape4


Tape5


Tape6

Я(ヤー)でファベルジェの卵(インペリアルイースターエッグ)をチョイスされるほか
しびれるものがいっぱい

(2018.12.9追記)
高橋真琴さんの貴重なポストカードを追加でいただいてしまいました。
いずれもロシアがモチーフと思われるものです。
Takahashimakoto4

左上「リトルタイガー」。
Takahashimakoto8

ロシアとは謳われていませんが、背景の白樺とネギ坊主っぽい建物のシルエットがロシア風。

右上「思い出ははかなく」
Takahashimakoto6
やはり白樺がロシア風。

左下「火の鳥」
Takahashimakoto7
火の鳥がモチーフですから完全にロシアがテーマですね。

右下「カチューシャの歌」
Takahashimakoto5
ロシアの寺院や女の子の赤いブラウスが素敵です。

高橋真琴さんの作品集「真琴の美学」復刊ドッドコムも拝読しました。
ロシアがモチーフの作品をいくつか挙げてみましょう。
「サモワール」p4~5
サモワールを使ったティータイムの様子が描かれています。
キリル文字も書かれています。

「冬の街角」p20
ロシアとは謳っていませんが、雪の結晶が素敵。
女の子がマフ、手袋をまとっています。

「石の花」p40~
ロシアの民話が描かれています。

巻末のインタビューでの高橋真琴さんのコメントも興味深いです。
抜粋でご紹介します。引用部分は青文字。

一目見てこれはロシアの白樺、これはポーランドの白樺、
北欧の白樺とわかるように描き分けることができないかと提案していたことがありました。


国の違いを絵で描きわけるために建物の屋根の形などでわかる工夫をしたそうです。
たとえばロシアだと教会のネギ坊主を描いたりします。 (p84~85)

高橋真琴さんの作品リストも圧巻。
私が白樺やロシアの風景に憧れを感じるのは
子供の頃に触れた高橋真琴さんの絵もサブリミナル的に影響力があったのかも、
なんて思いました。

2018年12月 1日 (土)

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催の「ロマンティックロシア」に行きました

モスクワにあるトレチャコフ美術館は私が大好きな美術館。
渋谷のザ・ミュージアムで国立トレチャコフ美術館所蔵「ロマンティックロシア」展が開催されているときいて、
ロシア語勉強仲間の友人と訪ねました。

私が一番大好きなマリア・ロプーヒナの肖像(詳細はこちら)は来ていませんでしたが、
クラムスコイの「忘れえぬ女」はやってきました!!

美術館が改修中でクローズ、ではないのにこの絵が日本に来ているってすごいことですよね。

会場は春、夏、秋、冬、ロシアの季節を絵画作品を通じて愉しめます。
初春、雪解け水が沼のように木の根元を覆う森の景色、緑の芽吹き、
夏の大地の上に広がる雲、秋の木々の鮮やかな黄色い色づいた葉、広大な雪原etc.
このほか、子供をモチーフにした絵、女性の肖像画、モスクワのネギ坊主の寺院の絵ほか。

ロシア・シックにかかっている身には絵画で触れるロシアテイストが嬉しかったです。
今回ひときわ惹かれたのが
ミハイル・ゲルマ―シェフ(Mikhail Markianovich Germashev)の
「雪が降った(Snow Fell)」。1897年の作品です。

少し黄色みを帯びたグレーの曇り空と雪の世界。
人物とあひる(ガチョウでしょうか)と。

その色合いと冬の空気感が素敵で。

この絵について調べてみました。

作家名のロシア語表記は
Михаил  Маркианович  Гермашев。
ミハイル・マルキアノビッチ・ゲルマーシェフ。
作品タイトルのロシア語表記は
「Снег  выпал(スニェーク・ヴィパル/雪が降った)」。

パブリックドメインの画像でのご紹介。
800pxsnegvypal1897

遠くにはロシアの教会も見えます。
雪が降った後のほんの少しだけ明るい曇り空。
シベリウスの「もみの木」もそうですが、暗さ80%。明るさ20%ぐらいの世界に惹かれます。

さて、目玉作品である「忘れえぬ女」ですが
祖父の部屋に昔、この絵の複製画がありました。
祖父の友人が三越での展覧会かなにかの時に購入したものとのことでした。

この絵画。どの角度から眺めてもこの貴婦人と目が合うのですよね。
以前、2階の祖父の部屋にあがって、電気をまだつけていない夕暮れ時に絵を眺めた時
ちょっと怖い思いをしたことがあります

バシッと目があって。

↓今回の美術展の告知チラシを撮りました。
201811tretyakov1
ぜひ、会場で「どこからでも目が合う」感を味わってくださいませ。

さて、入り口では忘れえぬ女とチェブがお出迎え。
201811tretyakov6

忘れえぬ女のコスチュームをまとったチェブのかわいいこと!!
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この展覧会の応援キャラクターとのことで、
「忘れえぬチェブラーシカ」なのだそうです~。

友人が買ったストラップ。
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私が買ったミニクリアファイル。
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裏面にはゲーナも。
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2018年9月16日 (日)

フェイラーのワールドトリップシリーズ(その1)ロシアをモチーフにしたタオルが最高!

昨年、ロシア語勉強仲間の友人から雪の結晶がモチーフのグレイッシュなタオルをいただきました。

渋く落ち着いた色調がとても素敵。
それがフェイラーのタオルだと知ってびっくりしました。
フェイラーは黒地で赤、紫などカラフルな色の花柄があしらわれている、というイメージだったので。
(詳細はこちらに)
同じく雪の結晶好きの姉にすぐフェイラーのこのタオルのことを教えてあげると、姉も感激してすぐゲット。

そして、今度は姉がフェイラーをチェックしてみつけた、というタオルをくれました。

ワールドトリップシリーズの「ロシア」だそうです。
(以下、画像はクリックで拡大します)
Feiler1_russia

かわいい~~~~~。

フェイラー社のカタログでは

モスクワの広場を観光したあと、
世界最古のバイカル湖でアザラシを発見!
ボルシチとピロシキで温まったら、
可愛いマトリョーシカのお土産を買って大満足。
広大な自然と神秘の文化を感じるロシアの旅。
好奇心をくすぐる見どころ満載のモチーフで、
自由に旅する楽しい気分を味わって。


と書かれています。

私自身で柄を辿ってみました。

カタログに書いてあるものは無印。
*があるのは私が勝手にモチーフを推測したものです。

全体の色調は冬の国のイメージで、青空と氷や雪の白なのかしら~
なんて思いました。
Feiler1_russia_name

不明な柄は、
私が「*シベリアンハスキー」と記した上部の赤い乗り物。
「バイカル湖」と記したところに伸びる
白と赤のものです。
(この2つが判明しました。追記として一番下に)

ピンク色の建物は
カタログに「モスクワの広場」と書いてあるので、
ワシリー寺院で間違いないでしょう。
Feiler2_russia
このネギ坊主の建物、血が騒ぐぐらい好きです。

マトリョーシカ、繊細な絵ではないけれど、感じがよく出ていますね。
Feiler3_russia

ラッコかなと思う、上を向いたアザラシもかわいいです。
Feiler4_russia

ボルシチの赤も綺麗に発色していますね。
上はシベリアンハスキーに間違いないと思うのですが。
Feiler5_russia

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私はロシアが心のふるさと。
姉はアメリカが心のふるさと。
なので自分用に同シリーズから
アメリカを買った、ということで見せてもらいました。

こちらもポップでかわいいです。

カタログ文。

自由の女神に挨拶をして、
タイムズスクエアを満喫しながら、
大きなハンバーガーをがぶり!

ナイアガラの滝を見物したら、
その迫力に圧倒!

大都会と壮大な自然のパワーを体感できる
アメリカの旅。

好奇心をくすぐる見どころ満載のモチーフで、
自由に旅する楽しい気分を味わって。

Feiler6_america

カタログの記載のモチーフ名を記してみます。
(*は私が推測)
Feiler6_america_name

自由の女神ちゃんが、マトリョーシカちゃんとおんなじ顔。
シンプルだけど、自由の女神とわかりますねヽ(^。^)ノ
Feiler7_america

ドイツのフェイラーのカタログを見ていたら、
こんな渋くモダンな色のシリーズもあってびっくりしました。
Cubus_seiftuch_30x30_petrol

(2018.9.20追記)
ロシア柄で不明の2つの柄が判明しました。
まず、その過程を。

姉から
赤いものは
Feiler1_russia_fune

サンクトペテルブルクの赤い帆祭
Shou_alie_parusa
↑Wikipediaより

もしくは、砕氷船ではないかとLineが来ました。
800px2009
↑切手より。

ロシアに行ったこともなく、チェブぐらいしかロシア物の興味がない姉が
私も知らない2つのアイテムをみつけてくるとは!

そして、フェイラーの雪の結晶タオルをくださったロシア語仲間とも
何の柄かしらと話していたのですが、
彼女からはレーニン廟の可能性も、との推察が。

なるほどと思いました。
Lenin_mausoleum
↑Wikipediaより

レーニン廟は聖ワシリー寺院とともに赤の広場にあります。
誰もがまず一番に訪ねるロシアの中心地。
カタログのモスクワの広場を観光したあと、の言葉を活かすために
加えたとも考えられます。

二人ともタオル下部の白と赤のものは
Feiler1_russia_votka

ウォッカの瓶だろうとのこと。

調べてみると、
Votka
似たデザインのウォッカがありました。
この柄がウォッカの瓶であることは間違いないでしょう。

さて、謎の赤いものの方ですが。

友人は海の上に描かれていることが気になったようです。
そして姉は、疑問をそのままモヤモヤさせておくのが耐えられない性分。

というわけで、今日、なんと!
友人と姉から「判明しました」とのメールとLineが来ました。

なんと。お二人とも(互いに面識はありません)気になって、
フェイラー社へ問い合わせをされたのでした。

そして判明したのですが、下の柄はやはりウォッカの瓶。
上の柄は氷の海を進む砕氷船とのことでした。

姉は推察が当たって喜び、すっきりしていました。
砕氷船とは。ずいぶんマニアックな気がしますが、
勉強になりました。

それにしても、フェイラー社さんもびっくりしたと思います。
タオル「ロシア」の同じ2つの絵柄に絞った問い合わせが同じころに2件続いたことに。

友人からはこのタオルがオリンピックを記念してつくられたものであることも教えてもらいました。

私はなんだろうと思いながらそのまま過ごしてきましたが、
疑問に思った友人と姉が解決して教えてくれる。
私は幸せ者です

色うっとり【アート】【雑貨】【本】INDEXはこちら

2016年12月 5日 (月)

藤城清治さんとロシアの関係

ロシア語を一緒に勉強していた仲間から藤城清治さんのカードをいただきました。
ピアノや遠景に描かかれている教会が少しロシアっぽいです、と。

素敵です
「3台のピアノ ノスタルジア」(2007年)
幻想的で、音楽が聴こえてきそうな作品。
(以下、画像はクリックで拡大します)
20161205fujishiro0short

2台のピアノと橋の向こう側に見える景色をアップで。

20161205fujishiro2
ねぎ坊主屋根。
ロシア正教の十字架(十の縦の棒の下に斜めに\が入っている)も見えます。

橋の向こうに広がる景色。
20161205fujishiro4

♪白鳥の湖 も聞こえてきそう。

ロシアをモチーフにしているのは明らか。

藤城さんとロシア、何か関係があるのでしょうか。
調べて、驚きました。

なんと。「ロシア好きのバイブル」といってもいい
パルナスのCMに登場するおとぎの国の城のようなビジュアルは藤城さんの作品だったのです

ところで、関東人である私がパルナスの存在を知ったのは大人になってから。
関西出身でロシアが好きな人が、「原点はパルナスだったのかも」との言葉がきっかけでした。
この方はパルナスが全国区でないことに驚いていました。

「探偵ナイトスクープ」でパルナスのCMや♪パルナスピロシキの歌が出てくる回
を録画したDVDはマイお宝映像です。

2015年5月21日 (木)

ロプーヒナ(その3)レフ・トルストイとの関係

マリア・ロプーヒナ(その3)です。

ロシアを代表する肖像画の美女と、文豪の名作に登場するならず者が実の姉弟でした。
そして二人ともレフ・トルストイの親戚でした。

家系図をつくってみました。
(※ 兄弟などを省き、関係する人物だけをピックアップ。
私自身が資料から作成したものです。
正確さを心がけておりますが、転用はご遠慮ください)

Maria_l_russia


画像はクリックで拡大します。

レフ・トルストイから見ると、マリアたちは祖父の兄弟の子供たちになります。
マリアたちからみれば、レフトルストイはいとこの子。

かなり近しいですよね。それだけではありません。

レフ・トルストイの妹がマリアたちの兄の子と結婚しています。
つまりレフトルストイから見ると、マリアたちは、義弟のおばおじになります。

また、レフ・トルストイはモスクワ知事のペルフィリエフと友人でした。
つまり、フョードルはレフ・トルストイにとって、友人の妻の父親でもあったのです。

マリア・ロプーヒナの肖像画はトレチャコフがモスクワ知事ペルフィリエフから入手しています。

推測ですが、早逝したマリアの肖像画を弟フョードルが持っていて、
それを娘プラスコフィアが譲り受け、モスクワ知事の夫とともに大切にしていたのかしら、なんて思います。

今でこそ、ウィキペディアであっさりと、マリア・ロプーヒナやフョードルの経歴や関係を知ることができますが、
私が調べ始めた頃は「レフ・トルストイの親戚」以上の情報を日本語の文献で入手できませんでした。
だからこそ、調べがついた時、感動しました。

ロプーヒナシリーズはこの(その3)で終了です。

ロプーヒナ その1 その2 その3

ロプーヒナ(その2)『戦争と平和』ほかの作品に出てくるあばれ者

5月14日のマリア・ロプーヒナの続きです。

文豪レフ・トルストイの名作『戦争と平和』にはドーロホフというならず者がでてきます。
このドーロホフの登場場面だけをピックアップして読むと、文芸大作『戦争と平和』が痛快なアウトサイダー小説に早変わり。

実に魅力的なドーロホフの描写は2011年1月20日のブログをご覧ください。

ドーロホフ以外にもトルストイは『二人の軽騎兵』であばれ者を描いています。
軽騎兵トゥルビン伯爵です。

『トルストイ全集3』(河出書房新社 1973)からご紹介します。(青字は引用部分)

「あれはあの決闘家の軽騎兵だ」(p90)
「あの男はサーブリンを殺し、マトニョーフの両足をもって窓からほうりだし、
ニェステロフ公爵から30万ルーブリ、カルタでまき上げたという男だ。
(私による略)
ばくちうちで、決闘家で、女たらしだが、
それでいて腹からの軽騎兵だ、軽騎兵だましいそのものなんだ」
  (p90)


背こそあまり高くなかったが、みごとな、美しい体格をしていた。
冴えた碧色のよく光る目と、ふさふさとうず巻いている、
かなり大きな暗い亜麻色の頭髪とは、彼の美貌にすばらしい特徴をあたえていた。
(p100)


舞踏会では団長夫人は、トゥルビンがスキャンダラスなことをしでかさないかといぶかしがっているのですが
伯爵はしかし、間もなくこの先入見を、
もちまえの愛想よさと、注意深さと、美しく快活な容貌とで征服してしまった
 (私による略)


トゥルビンに好意を持つアンナがお金の援助を申し出ると、トゥルビンは柔和な表情から一転、激怒。
「女が男を侮辱したら、その時はどうするか。ご存じですか?」

困惑して目を伏せるアンナに
「衆人環視のなかでね、その女に接吻するんですよ」(p105)

このあとトゥルビンはアンナの馬車に無理やり乗り込みます。


『二人の軽騎兵』は前半はこのトゥルビンの物語。
後半は20年後、トゥルビンが亡くなっており、息子のトゥルビンジュニアの話になります。

よく似た美しい息子は23歳の近衛軽騎兵になっています。
若い伯爵トゥルビンは、精神的にはまるで父に似ていなかった。
彼には、前時代のあの乱暴で、情熱的な、実をいえば放恣な傾向は影さえもなかったのである。
(p116)

イケメンで女たらしで賭博が好きで、大胆不敵、落としたい女性は必ず落とす、だけど軽騎兵だましいを持つ。
そんな人物をトルストイは生き生きとした筆運びで描いています。
小さくまとまったジュニアより、この不埒なトゥルビンのような人物をトルストイは好きなのかなと思うほど。
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『エフゲニー・オネーギン』プーシキン著
プーシキンの有名なこの作品にもあばれ者が登場します。決闘好きのザレツキーです。


『オネーギン』プーシキン著 池田健太郎訳(岩波文庫 1962)からご紹介します。(青字は引用部分)

第六章 決闘
ザレーツキーという男が住んでいて、今だに無事息災を保っている。
このザレーツキーは、昔は乱暴者で、賭博仲間の親分格で、放蕩者の領袖で、
居酒屋の用心棒だったが、今は善良な、素朴な家庭の父で、
男やもめで、信頼できる友人で、平和な地主で、その上誠実な人でさえあった。

昔はよく社交界の追従の声が、彼の凶悪な勇気をほめちぎった。
事実、彼は十メートルほどの距離から、ピストルでトランプのポイントを打ち抜いた。
またある時は、戦闘に出て有頂天のあまり武勲を立てたが、
へべれけの酔漢そこのけにカルムィク馬からどうと泥濘へ落ち、
フランス軍の捕虜になった。
(私による略)

また昔はよく慰みに人をからかったり、馬鹿者をだましたり、
陰にまた陽に利口者を愚弄するのが得意だった。
(私による略)
若い友人同士を喧嘩させて、決闘場に立たせる術も心得ていた。
そうかと思うと彼らに仲直りをさせて、三人仲良く朝食を食べ、
そのあとで陽気な冗談や駄ぼらを放ち、こっそり彼らを笑い物にした。
(p97~98)
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以上、日本で演じるとするなら海老蔵かな~と勝手に想像している、
ロシア文学のあばれ者3人衆、ドーロホフ、トゥルビン、ザレツキーをご紹介しましたが、
なんとこの3人には実在のモデルがいるのです。

それもすべて同じ人物
それがフョードル・イワノビッチ・トルストイです。
ロシア語でアメリカ人を意味する「アメリカニェツ」をあだなに持ち、
トルストイ=アメリカニェツとも呼ばれる人物。

それぞれの作品の解説にも書かれているのでご紹介しましょう。

■前述の『トルストイ全集3』の『二人の軽騎兵』の解説より。
主人公である父軽騎兵トゥルビン伯爵は、トルストイ自身の又伯父にあたる、
あばれ者で有名なフョードル・トルストイをモデルにしたものと伝えられ、
その放縦ながら、無欲豪快な性格は、まさしく一世の英雄型であり、
トルストイ自身の好みもそこにあるらしく、この軽騎兵は、
その後、『戦争と平和』の中に、あばれ者ドーロホフとして、
その一面をみごとに芸術化されているといわれている。 (p441 )

■『完訳 エヴゲーニイ オネーギン』プーシキン著・小澤政雄訳(群像社 1996)での注釈より
ここで「ほら吹き」としているのはフョードル・イヴァノーヴィチ・トルストイ(1782-1846)のこと、
「アメリカ人」のあだ名をもつ退役近衛将校で、決闘屋で、カルタのばくちうち。
中傷でプーシキンの名誉を傷つけたのでプーシキンは彼と決闘しようとした。
(p124)

■『完訳 エヴゲーニイ オネーギン』での注釈より。
決闘好きで決闘家のトルストイ=アメリカーネツは武勲をも誇りにしていた。
彼は1812年に、蟄居を命じられていたカルーガ村を勝手に離れて、ボロジノの戦野に現れ、
「兵隊外套を着て、一兵卒と共に敵との戦闘に加わり、手柄をたて、四級十字架勲章を貰った」
(p181)

このフョードル・トルストイ。文豪トルストイとは親戚の関係ですが、プーシキンとはどんな関係があったのでしょうか。

『プーシキンの生涯 下』グロスマン著・高橋包子訳(東京図書 1978)
によるとプーシキンは後に妻となるナタリヤの母との仲介をフョードル・トルストイに頼んでいます。

『ロシア貴族』ロートマン著・桑野隆・望月哲男・渡辺雅司訳(筑摩書房 1997)によると
プーシキンはフョードルによる中傷によって自殺の際にまで立たされていたことを、皇帝に告白しています。
また、プーシキンは
1821年の寸鉄詩でフョードル・トルストイのことを、
陰気で破廉恥な人生に彼はずっと浸っていた
世界の端のすべてをずっと自堕落で冒涜してきた
けれども少しは身をただしおのが恥をやわらげた
そしていまでは彼は――幸いにトランプの席の泥棒にすぎない

と記して侮辱していると書いています。

さて、こちらがフョードル・イワノーヴィッチ・トスルトイです。
F_i_tolstoyamericanets_young_2

なぜ、マリア・ロプーヒナ(その2)でこのフョードルが出てくるかと言いますと。

マリアの旧姓がマリア・イワノーヴナ・トルスタヤ。
フョードルのフルネームはフョードル・イワノーヴィッチ・トルストイ。

ロシア人の名前は、名前・父称・苗字で構成されています。
マリアもフョードルも父親がイワンであることがわかります。
つまり、二人は姉弟なんです

びっくりしました。ロシアのなぜか無性に気になる絵の女性と、ロシアのなぜか無性に気になるキャラクターが姉弟。

つづきはその3に。
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♪私メモ

フョードル・イワノーヴィッチ・トルストイ
Фёдор Иванович Толстой/Fyodor Ivanovich Tolstoy)
Американецアメリカニェツのあだなを持つ。   

ロプーヒナ その1 その2 その3

私流『戦争と平和』(トルストイ著)の読み方 1 2 3 4
ロシアINDEXはこちら
Photo_1

2015年5月14日 (木)

ロプーヒナ(その1)ロシアのトレチャコフ美術館にあるマリア・ロプーヒナの肖像画

ほとんどの方が興味を持たない人物のお話です。
何か検索をされて、こちらに行きあたった方は相当マニアック(^_^.)

中学時代。美術の時間か選択の美術クラブの時間だったでしょうか。
学校にある画集から気になる絵を選んで模写するという課題がありました。

海外のいろんな美術館の画集を手に取ってパラパラ。
その時、ガーンと打たれた絵がありました。まるでヘレンケラーがWATERを思い出した時のように。
私、この人知ってる!!! このまなざしを…。

それがロシアのトレチャコフ美術館所蔵の、マリア・ロプーヒナの肖像でした。
Maria_ivanovna_lopukhina

白いドレスのやわらかな質感が伝わってくるようで、
ベルトのように巻いた布の水色も美しくて、
そして何よりロプーヒナがうっとりとした表情なのが印象的なんです。

実際にトレチャコフ美術館にこの絵を見にいった時は、画集で見ている以上に色合いが豊かで感動しました。
芍薬の淡いピンクや背景の緑色、そしてストールでしょうか、淡いラベンダーも。

トレチャコフ美術館のHPではこちら
ttp://www.tretyakovgallery.ru/en/collection/_show/image/_id/403
で、この絵と解説がご覧いただけます(英語)。

私がこの絵に惹かれたのはウン十年前。
画集では文豪レフ・トルストイの親戚と紹介されているくらいで
この女性についてそれ以上の情報を得ることはできませんでした。

ですが、私がロシア語文献を読めるようになり、ロシア語のサイトも訪ねられるようにもなり、
今では随分この女性についてわかるようになりました。

得た情報をまとめてみますと。

画家は
ボロヴィコフスキー(1757—1825)
制作年は1797年。

モデルは
マリア・イワノーヴナ・ロプーヒナ(1779~1803)
狩猟官アブラム・ロプーヒンの妻だったマリアは24歳の若さで結核で亡くなったようです。
絵が描かれたのは18歳の頃でしょうか。

絵はパーベル・トレチャコフがモスクワ知事のペルフィレフと
その妻プラスコーヴィヤ(ロプーヒナの姪)から取得したようです。

上記のトレチャコフ美術館のサイトでは、この作品がかなりのズームアップでご覧いただけます。
背景のヤグルマギクの青も美しいです。ニュアンスのある色彩をぜひお愉しみください。

拙いですし、書きかけですし、保存が悪くて紙が折れていてお恥ずかしいのですが、
こちらが私が中3の時に描いたロプーヒナです。
20150514lopukhina

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♪私メモ
ウラジーミル・ルーキチ・ボロヴィコフスキー
Владимир Лукич Боровиковский/Vladimir Lukich Borovikovsky)

マリア・イワノーヴナ・ロプーヒナ
Мария Ивановна Лопухина/Maria Ivanovna Lopukhina)
※旧姓はマリア・イワノーヴナ・トルスタヤ

アブラム・ステパノヴィッチ・ロプーヒン
Авраам Степанович Лопухин/Abraham Stepanovich Lopukhin)

パーベル・ミハイロヴィッチ・トレチャコフ
Павел Михайлович Третьяков/Pavel Mikhailovich Tretyakov)

ヴァシリー・ステパノヴィッチ・ペルフィレフ(1826—1890)
Василий Степанович Перфильев/Vasily Stepanovich Perfilyev

プラスコーヴィヤ・フョードロヴナ・ペルフィレーヴァ(1831-1887)
Прасковья Фёдоровна Перфильева /Prascovia Feodorovna Perfilyeva)


ロプーヒナ その1 その2 その3

2014年3月30日 (日)

ラフマニノフは春先の空模様にもぴったり

去年の3月にラフマニノフをテーマにしたコンサートに行きました。
アップしようと思いながら1年以上経ってしまいましたが、
浅田真央の「ピアノ協奏曲第二番ハ短調」を聴くたびに、やっぱりラフマニノフいいな~と思い、
1年ちょっと遅れでアップします。

さて、私にとって冬になると聴きたくなる曲トップ3は。
1 「ピアノ協奏曲第二番ハ短調」ラフマニノフ
2 「樅ノ木」シベリウス
3 「四重人格」ザ・フー

ですが、ラフマニノフは春先(東京ですと2月~3月頭ぐらいまで)もいいな~と思ったきっかけが、
昨年2013年3月10日サントリーホールで行われた上原彩子ピアノリサイタルでした。
3月10日と見て、あの「煙霧」の日!!と気づかれた方は気象マニアかも。

あの日、昼間のコンサートだったので、私はあたたかな春の陽気の中、ホールに入りました。
終演後、外に出たのは夕方。北風にかわっていました。
つまりコンサート中に煙霧があったため、家に戻ってから
ニュースで100年に一度?ともいう煙霧があったことを知ったのでした。

さて、上原さんのピアノ一台、1人だけによるリサイタル。
肘を使って叩くというようなアバンギャルドな手法はなく、正統派の弾き方なのですが、
ピアノに振り下ろす腕の迫力といったら!!
「つまびく」というよりも「叩く」に近い迫力。

ピアノは鍵盤楽器ではなく、打楽器だ
と実感させるコンサートでした。

ピアノは同時に出せる最大の音数が10個なのに、どうしてこんなに重厚なのだろうという音色でした。

プログラムでは、バンクーバー五輪での浅田真央のフリー曲「鐘」も演奏。
ピアノ一台で生み出されるエネルギーにぞくぞくしました。
「13の前奏曲」のメランコリックさ、「ライラック」のリリカルさも素敵でした。
アンコールで「ボカリーズ」が演奏されたのもうれしかったでした。

私の中でラフマニノフ=冬だっがのが、このコンサートで、
春先にラフマニノフを愉しむというのもいな~と感じた理由は、
冬よりも春先の空模様の方が、暗と明がはっきりしていて、またその配合がラフマニノフに近いなと思ったから。

冬の空や空気は「白~薄いグレー」のイメージがあります。
寒波が来てもあまり「暗い雲」がたちこめてという印象がありません。

一方、春先は。
「チャコールグレーのような濃いグレー色の雲」がもくもくと立ちこめる日が多い気がします。
ユーミンは「ベルベット・イースター」で、空が低い、天使が降りてきそうなほどと描写していますよね。
おそらく、ユーミンがイメージしたのは低くたれこめた鉛色のような雲。

そんな濃いグレーの雲の隙間から時折差し込む日差しは、
冬よりも力を増してまぶしく、温かく、コントラストがあります。

鉛色の空。寒さ←→時折の日差しと春のぬくもり。
まだ枯れ木の野山の茶色←→芽吹いた葉や花の色。
陰鬱さ90%←→明るさ10%(春先の天気の悪い時)

            
(色でいうとこんな配合のイメージ)

春先のこの比率がラフマニノフに近いな~と思うのです。
重厚で少し濁ったメランコリックな音楽←→きわめてわかりやすく、甘美で明るいメロディー

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そして、ラフマニノフの曲でこれぞ春!!!
と感じるのが「春の水(Весенние воды)」。

この小曲を知ったのは、かれこれ20年以上前、NHKで放映されたバレエ公演「マイヤ・プリセツカヤと仲間たち」でした。
プリセツカヤをはじめとするロシアのトップダンサーが「海賊」「ドンキホーテ」をはじめとするパ・ド・ドゥetc.披露する中で、
ラフマニノフの「春の水」を使った演目があったのです。
そのダイナミックな曲調と勢いよく走ってくる女性を男性が受け止めてリフトを繰り広げるアクロバティックなバレエの振付がとても印象的でした。
日本で「春の水」といったら「春の小川」。
のどかな小川やせせらぎのイメージですよね。
なぜ春の水がこんなにダイナミックなのと当時疑問に思ったのですが、
ロシアで「春の水」と言えば「小川」ではなくて「氾濫」。
雪が大地を覆い、河が凍る北国では、春になって森を覆っていた雪が解ければ、
まるで湖に木が生えているような眺めになり、河の氷が融けて流れて氾濫となるのですね。

露日辞典に весеннее половодье(ヴィセーニエ・パラヴォージエ/春の氾濫)、
разводье(ラズヴォージエ/春の出水)という言葉があることからも、
春の水 =ダイナミック=ほとばしるエネルギー なのが感じられますね。

2014年3月 9日 (日)

ソチ五輪閉会式

ソチ五輪閉会式もロシアの魅力たっぷり、そして雪から春への季節を感じさせる素晴らしいものでした。
私の印象に残ったベスト10を。

【1位】4.5輪が5輪に。
憎いですね~ 開会式での失敗を逆手にとって。
でもあの失敗がなかったら、閉会式で五輪をつくっても盛り上がらなかったでしょう。
右上の輪を最初閉じておく。その「ウケ」。開いて無事五輪になる「盛り上がり」。ナイスでした。

【2位】聖火を消す。
ホッキョクグマが白い息を吐いて聖火を吹き消して、水色の涙がこぼれるところが素敵でした。

【3位】 鏡の国と動物。
空間を使い、床を使い、立体的に別世界を作る技術。
いくつもの鏡が作り出す不思議な空間も見事でした。
ホッキョクグマ、ユキヒョウ、うさぎ。毛がふかふかしていることが映像でもわかります。
動物たちの足元にリュボーフィちゃんたち。動物と一緒に遊びたいという夢を叶えた素敵な1シーン。
宮崎駿の『となりのトトロ』、ふかふかの猫バスで遊ぶメイちゃんたちの1シーンを思い出しました。

【4位】波に魚のような光の伝道師のマスゲーム。
大勢の人が次々とフォーメーションを変えて形を作るのが圧巻。
映像が人をアップにすると、ただ銀色のマントを羽織っているだけにみえるのですが、どうしてあんな風にキラキラと光るんでしょう。
上からの映像では本当に水が床に張ってあって、太陽光で反射しているように見えました。

【5位】リュボーフィちゃんたちの船の旅。
閉会式の冒頭。青く光る柱はオーロラのよう。
下には青い波。そして本物の花火を流れ星に見立てる演出にもびっくり。
リュボーフィちゃんたちの船が空中に浮いている様子にうっとりしました。
こんな景色のなかをゆっくりと進んでいく、そんな遊園地のアトラクションがあったらいいな~。

【6位】ミモザのフィナーレ。
ミモザの枝を持った人たちが現れたフィナーレ。
キラキラ降る金色のものは金メダルのオマージュのようにも見えます。
黄色いミモザはロシアでも春を象徴とする花。
白い雪の世界でおこなわれる冬季五輪が終わって春がやってくる、というのを感じさせる演出でした。
3匹の動物たち、大勢の人が並んでそこに黄色に輝く花畑が広がる様子はに『風の谷のナウシカ』を思い出しました。
青き衣をまとった者が金色の野を思い出しました。

【7位】ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番ハ短調。
浅田真央のあのフリーがよみがえりました!!
__
画像提供:www.kremlin.ru

【8位】シャガールの世界。
シャガールの独特の色使い。雲だけではなく人も建物も空中に浮いている幻想的な感覚。
ジプシーバイオリン。2二次元の絵の世界がこんな風に再現できるのがすごいですね

【9位】バレエ。
ボリショイとマリンスキーによるバレエも圧巻。この時は本当の劇場のような空間になりましたね。
空中に吊るされたいくつもの柱も選手入場の時のロシアの国旗のカラーとは違って、金色に。
まるでシャンデリアの一部のようでした。
紫色のと金色の照明でゴージャス。
バレリーナの白いチュチュが金色の光に透ける様子はまるで後光が差しているような美しさでした。

【10位】韓国。
次回冬季五輪の開催国韓国の場面。床が水墨画のような世界に早変わり。
鶴の白い羽が光るところも印象的でした。
鶴、松。韓国と日本の原風景の近さを感じました。

------------
ロシア文学の場面で使われた音楽が浅田真央使用曲の「仮面舞踏会」なのもうれしいですね。
サーカスの場面では、テントまであの時間の中で組み立ててしまう大がかりさに驚かされました。
サーカスのテントをたたむ場面では、本物のテントをたたむのと、
床に映した映像と連動してシュ~と吸い込まれるように 消える技術もすごいですね。

おまけ
20140309sochi1_2
こちらはいただきもののソチ五輪チョコ。

それぞれの種目のピクトグラムとロシア語が書かれています。

20140309sochi2


20140309sochi3_2
↑фигурное катание на коньках(フィグールナエ・カターニエ・ナ・カニカーフ)は
絵で推測できる通りフィギュアスケートのこと。

ミルクチョコレートです。

2014年3月 6日 (木)

ソチ五輪の開会式


ソチ五輪が終わりましたが、
開会式、閉会式ではロシアの伝説、工芸、自然、建築、バレエ、音楽、アートが満載。
また、床に映像を映し、空間を使う立体的な演出が素晴らしく、圧倒されました。

五輪競技では、なぜこんなふうに跳べるんだろう!速いんだろう!
と人間の「身体能力」の究極に眼をみはるのですが、
競技ではない開会式閉会式でも、
なんで人間がこんなこと思いつくんだろうという人間の「想像力&創造力」に驚かされました。

思いつくだけならまだしも、それを実際に形にできるところが凄いですよね。
会場という限定された空間で、編集して組み合わせることのできないLIVEという制限の中で、
秒単位で映像も大勢の人間も機械も精密に動かさなければ実現できない「総合芸術」。
それをスタッフすべてが一糸乱れず動いて創りだす。
人間の可能性の凄さに圧倒されました。

勝手にで印象に残った場面ベスト10を挙げます。
ガガーリンや宇宙に関する場面はこちらで挙げたのでそれ以外を。

【1位】五輪の輪。
ロシアの威信をかけたセレモニーでこんなトラブルが起きるとは。
5つの雪の結晶が近づいて五輪になるはずが、1個開かずに4輪に。
失敗した担当者の身を勝手に案じてしまいました。

【2位】ロシアの寺院のネギ坊主がふわふわ浮かぶシーン。
「よくぞこれを形にしてくれた!! 
人間の創造力、Ура!(ウラー!/ロシア語の万歳の意味)」と叫びたくなりました。
2色のキャンディーを合わせてひねったようなネギ坊主は聖ワシリー寺院を代表とするロシアの教会にみられるものですね。
オレンジ、黄色、青、カラフルな人形やコスチュームはロシアの民芸品Дымково(ディムカバ)のよう。
サーカスのようなアクロバティックな動き、輪になって踊る人々。中世のお祭りのよう。
床もディムカバのお皿のような柄が映し出されていて、おとぎの国に迷い込んだみたいな楽しさでした。
こんなビジュアルが実際に形にできるなんて!
ネギ坊主が空中に浮かんで、聞こえてくるのはロシアの鐘の音。
ずっと見ていたい。遊園地にアトラクションとしてあってもいいのにと思うほど魅せられました。

【3位】選手入場のシーン。
SF映画かと思いました。
宇宙から地表を俯瞰で見る画像→ギリシャ付近が映ったあと、中央に白い光の帯が現れます。
そこに選手たちの姿。最初の上からの映像ではどうなっているのかわかりませんでした。

次の映像で、白い帯と思ったのは、会場の地下からの白いスロープで、
そこを選手たちがのぼってきて姿を現す仕組みであることがわかりました。
映画「未知との遭遇」で宇宙船から宇宙人が降りてくる場面や宇宙に行った地球人が降りてくる場面がよぎりました。
とてもSF的な登場シーンがツボでした。

【4位】波と船。
同じ床が映像や照明で別世界に変わる。映像技術の魔法にしびれたのがこの場面です。
カラフルなロシアのおとぎ話が一転モノクロの世界に。
水墨画のような黒い波。本当に水が波だっているかのような迫力。
そこに右側から船がやってきます。甲板にいる乗組員たちは、船の進行にあわせて一緒に動きます。
プロジェクションマッピングみたいな技術なのでしょうか。
本当に船が存在して波の上を滑っているように見えました。圧巻でした。

【5位】マスコットキャラクターのおっさん顔。
ホッキョクグマをモチーフにしているそうですが、可愛くなく老け顔なのが逆にかわいいです~。

【6位】ロシアの大陸。
冒頭、ロシアの大陸が空中を浮かびながらやってくるシーンが幻想的でした。
特に白馬のと白樺の大陸は、東山魁夷の絵を見ているようでした。

【7位】白いトロイカ。

まるで夢の中のようでした。スローモーションのようにゆっくりと馬の脚が動く様子も。
雪のように白い馬が、オレンジの太陽の輪を曳いているのがロシアの民話の世界を見ているようでした。

【8位】鳩の場面。
光るフリンジみたいなものを持って回るだけであんな美しさを創りだせるとどうやって思いついたのでしょうか。
幻想的で、どこか日本的でもありました。
フリンジを上の方で回転させたり、低い位置で回転させる動きが、羽根を羽ばたかせる鳥に見えました。
最後に全員で鳩の形を作るところ、鳥肌が立ちました。
Opening_of_xxii_winter_olympic_game
画像クレジット:www.kremlin.ru

【9位】 リュボーフィちゃん(Любовь/ロシア語で愛の意味)が青い球の上にのって赤い風船を持つ場面。
暗い観客席のあちこちでフラッシュなのかメダルの明かりかが光る様子はまるでプラネタリウムの星。
その中に浮かぶリュボーフィちゃん、青い球、赤い風船がファンタジックでした。
昔大好きだったフィリップジャンティカンパニーのパフォーマンスを思い出しました。
Opening_of_xxii_winter_olympic_ga_2
画像クレジット:www.kremlin.ru

【10位】ロシアンアバンギャルドの場面もしびれました。
赤と黒。帝政ロシアの優雅さをおもわせるロシアバレエもロシアの神髄ですが、
こういう無骨で鉄の塊といった世界もロシア~ソビエトならではのもの。
音楽の「Время, вперёд!(ブレーミヤ・フピリョート!/時よ前進!)の勇ましさにもしびれました。

おまけ。
20140306sochi
↑マトリョーシカをタップする競技が面白くて、
雪の日にマイお宝マトリョーシカを雪の上に置いて撮ってみました。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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